ギャルソンくん、

「俺についておいで」

「っ、え?」

「部外者は立ち禁だけど、俺が連れてきた女って言えばイイ扱いしてくれるよ」


本気なのか、冗談なのか。

予想もしなかった提案に、ただ彼をぽかんと見つめるしかなく。


……ていうか、この人。
異性のことを“オンナ”って呼ぶんだ……。

なんて、一瞬この場に関係のないことを考えた。


嫌悪とか、そういう類ではない。

普段の懐っこい笑顔や柔らかな口調とのズレを感じただけ。

そのアンバランスさが彼という存在をいっそう不可解なものにさせる。


「男ばっかな場所いける?」

「……へ、」

「あと騒がしいの平気?」

「え……っと、あの」


まっすぐに見つめる目が返事を急かしてくる。


「……いけますたぶん」


小さく吸った息を、声といっしょに吐き出した。


「じゃあ、そこで待ってな。俺はあいつを起こしてくるから」



───“あいつ”。

おそらく……おそらくだけど、さっきの言葉が聞き間違いでなければ、

ベンチに横たわって眠っている彼は、“メーテルくん”だ。