ギャルソンくん、

しっ───。

人差し指を口元に添えて、彼は静かに私を制した。

唖然とする。

いったいいつからそこにいたの。
どこから現れたの。


「また来るとは思わなかった。しかもひとり
で……そんなに攫われたいの?」


その口元がゆるく弧を描く。

どうして……だろう。

この人に見つめられると、なにも言えなくなってしまう。


「昨日忠告したよね、この辺りは野蛮なのが多いから気をつけろって」

「……はい」


「今日は特に早く家に帰ったほうがいいよ」

「え? なんで……」


少しの沈黙が落ちる。


「今夜、ここの近くで会合がある」

「カイゴウ?」

「月に一度の祭りみたいなもんだよ。バイクどもがやかましくてしょうがねえの」


ギャルソンくんが、ひょいと肩をすくめてみせる。
それ以上詳しく教えるつもりはないらしい。


「そんな場所に長居するほど、命知らずじゃないでしょ、お前は」