ギャルソンくん、

どきりとする。

さっきまでの柔らかな雰囲気はどこへ消えてしまったのか。

寂しそう、でも、悲しそう、でもない。

何も映していないんじゃないかと不安になるほど、その瞳の奥は真っ暗で冷えきっていた。


見てはいけないものを見てしまったような気がして息が詰まる。
居心地の悪さを感じて目を逸らしたタイミングで、私のスマホが音を立てた。


画面に光るメッセージを見て、はっと思い出す。

……そうだ、私、合コンに行く途中だった。


「っ、行かないと、」


私に続いて、ギャルソンくんもミルを抱えて立ち上がる。


「男漁りもいいけど、ほどほどにね。ここらの人間は野蛮なのが多いから」


なぜかわたしが合コンに行くことまで知ってるらしい口ぶりに赤面しながらも、時間が迫っているので苦笑いで誤魔化すだけにした。


「あの、ミルくん触らせてくれてありがとうございました」

「どういたしまして。また会えるといーね」


それはミルになのか、ギャルソンくんになのか。
気になりながらも口には出さずにお辞儀をする。


それから、私はゆっくりと、ギャルソンくんに背を向けた。