榛名三兄弟は、学園の王子様(🚺)をお姫様にしたいみたいです。【マンガシナリオ】



〇朝・学校の下駄箱の前

凛子(また入ってる……)

凛子は下駄箱に入っていた一枚の紙切れと、一枚の封筒を手に取り、ため息を漏らす。

凛子は学園の王子様として女子たちからの人気も高いが、逆に一部の女子生徒からは調子にのっているなどと言われ嫌われている。その一部の女子からの嫌がらせの手紙が入っていることがあるので、またそれかと思っている。

叶羽「りっちゃん、おはよう」
凛子「おはよう」
叶羽「それ、手紙? もしかして、ラブレターじゃ……」(影を背負った怖い顔で)
凛子「違うから! それよりほら、教室行こ。千紘くんと政宗くんは?」
叶羽「二人なら……」

叶羽が後ろに視線を向ける。
凛子もその視線の先を辿れば、女子生徒に手を振りきゃあきゃあ言われている政宗と、声を掛けてくる女子生徒を完全に無視して気だるげな顔をして歩いている千紘の姿が見える。

しかし凛子に気づくと、政宗も千紘もとろけるように甘い笑みを浮かべて、凛子の方に近づいてくる。二人を囲んでいた凛子を嫌っている女子たちは、凛子の存在に気づくとひそひそ陰口をたたきながら凛子を睨みつけている。

政宗「よっ。なぁりっちゃん、このまま学校サボってデートでも行かねぇ?」
千紘「おはよう、りっちゃん。政宗の戯言は無視していいから」
凛子「あはは、二人ともおはよう」

空笑いを浮かべながら、凛子はバレないように持っている紙切れと封筒を急いでブレザーのポケットに突っ込む。
しかし叶羽は、それをばっちり見ている。


〇放課後・校舎裏にて

撫子「わたくしたち、今日は確認したいことがあって凛子さんをお呼びした次第です」

凛子は、撫子とその取り巻きの女子数人と対峙する。
緊迫した空気が流れる中――撫子が口火を切る。

撫子「っ、あの幼馴染だとか抜かしている男たちは、凛子さんの何なんですの!?」
凛子「え!? えーっと、何と言われても……普通に幼馴染なだけ、かな」
撫子「許可なく凛子さんにべたべたと……わたくしたち、許せませんわ!」
取り巻きA「桃園会長の言う通りです!」
取り巻きB「わたしたちだって、凛子さんとお話したいのに……!」

凛子ファンクラブ(非公認)の面々は、榛名三兄弟に対しての怒りを顕わにしている。
凛子は困惑しながらも、何とか彼女たちを落ち着かせようとする。

凛子「えーと、とりあえず……良ければ今度、一緒にお昼でも食べませんか?」
撫子「え? ……り、凛子さんと、お昼を一緒に……!?」
取り巻きB「うそ、本当に……!?」
凛子「はい。皆さんとは、一度ゆっくりお話できたらなって思ってたんです」

凛子からの提案に、撫子たちは頬を赤く染めて興奮している。

撫子「も、もちろん大歓迎ですわ! 絶対ですわよ! 約束、忘れないでくださいね!」
凛子「はい、もちろんです。楽しみにしてますね」

きゃあきゃあ言いながら去っていく撫子たちを見送った凛子は、(撫子先輩たち、今日もすごくパワフルだったなぁ)と思いながら、ブレザーのポケットに入れていた手紙を取り出す。

封筒に入っていた便箋を開く。撫子からの手紙。

『凛子さんへ 本日の放課後、校舎裏にきていただいてもよろしいでしょうか? ご確認したいことがありますの。ご足労をかけますがお願いいたしますわ。 三年二組 桃園撫子』

凛子(でも、撫子さんたちからは直接話がしたいって呼び出されたけど、もう一つのこの手紙は、誰からのものなんだろう? ここにも放課後校舎裏にきてほしいって書いてあるけど……)

四つ折りの紙切れの方を開く。差出人は不明。

『放課後、校舎裏にきてください』

凛子が手紙を見て佇んでいれば、誰かの声が聞こえてくる。

女子生徒「――れか、――けて!」
凛子「え? 今、声が聞こえたような……?」

凛子が声の聞こえる外部用具室がある方に足を向ければ、声が段々と大きくなる。

女子生徒「誰か、助けて!」
凛子(やっぱり、誰かが助けを求めてる声だ!)

凛子は駆け出す。
声が聞こえる用具室の扉を開ける。

凛子「誰かいるんですか?」

真っ暗な用具室に入って視線を彷徨わせていれば、ガシャーン! と大きな音を立てて、扉が閉められる。その直後に外側から鍵がかけられたような音もする。

女子生徒1「藍沢凛子、アンタが悪いのよ」
女子生徒2「調子にのって、榛名くんたちに付き纏ってるから」
女子生徒3「ちょっとは痛い目みればいいんだわ」
凛子「え? どういうこと……?」
女子生徒1「あはは、そこで大人しく反省してなさい」

笑い声を響かせながら、複数の足音が遠ざかって行く。
そこで凛子はようやく、自分は嵌められたのだと気づく。

凛子(どうしよう、もしかしてわたし、閉じ込められちゃったの……!?)