師走の熟した日本の風は、誰にとってもあまり優しくはない。
入口の扉から外に出て身震いし、何気なく右の方に目向けると、突き当りの陰から吐き出される人工的な煙が見えたので、迷いなくそちらへ歩みを進める。
と、予想通り。探し人の姿。
「…見つけた」
「…」
「こんな寒いのに煙草なんて吸ってさ。そんなんじゃ冷える頭も冷えないよ」
「…」
「…」
「…なにしに来たの」
小さな声だった。
その問に私は明確な答えを返せず、この人はなにか、何かに怯えているのかもしれない、と考える。
(怯えてるって…なにに?私に?)
そんなわけがない。
どう答えればいいのか、どう声を掛ければいいのか。分からずに黙りこむ。
我ながら見切り発車も大概である。
テリトリーにズカズカと侵入しておいて、そのくせなにも始めようとしない私に、先に痺れを切らしたのは彼の方だった。
「…冷やかしなら帰ってくれよ」
まるで、言うことを聞かない子供へ懇願するみたいだった。
少しだけ悲しくなる。
(冷やかし…)
そう見えるのだろう。
きっと仕方のない事なのだろう。
だけど。
それは間違いなので、彼の思い込みなので。
私は反論しなくてはならない。
「…決めつけすぎでしょ」
「アンタみたいなのの考えること、大体同じだろ」
「…私みたいなのって…たとえば」
「地位と名誉。あわよくば顔のいい男。宝庫だもんな、ここ」
「…」
「野生のアクセサリーショップみたいなもんか」
「…」
なるほど。言わんとしていることをなんとなく理解する。
(自意識過剰?…いや、)
いや。
どちらかといえばおそらくは、過剰にならざるを得ない環境。
「…気持ちはわかるって言っといてやるよ。でも、」
「…」
「こっから先は立ち入り禁止なんだよ。世間知らずのお嬢ちゃん」
たとえば。
私がただの高校生で、何も知らず貴方たちに出会って。
私は彼やロンさんに、真っ直ぐに純粋に、恋をしたのだろうか。
「…貴方たちのうちの誰かの彼女になりたい、なんて思ってない」
「…」
「きっとこれからも思わない。私は限りなく、この世界から遠い人間だから」
「…どういう意味」
「私にだって考える頭くらいあるってこと。ロンさんなんて見るからに危ない」
「…」
「頭ごなしに一括りにして人のことミーハー呼ばわりするの、割と失礼だからね」
(…やば、熱くなっちゃった)
黙り込む彼を前に、一瞬の反省会。
自分から湧き上がる存外に熱をもった感情に、私とて少々困惑している。
