何もない無音空間。
ここは天国と地獄の狭間。
つまり死後の世界だ。
ここで、天国行きか地獄行きかをずっと待ってると思ってたーーーーーーーー
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私の名前は白宮瑠夏(しらみやるか)。
4ヶ月前、あやめグループという大企業が導入した「リアル人狼ゲーム」によって命を落とした。
死んだらいきなり天国か地獄に行くと思ったら、天国と地獄の狭間(ここ)で、天国行きか地獄行きかを待ってろって言われた。
にしても4ヶ月も待たされるなんて、いったい何をしているんだろう。
周りには自分と同じように死んだクラスメイトがいる。
「リアル人狼ゲーム」はクラスに導入されたので、同じように死んだクラスメイトがたくさんいるのだ。
そんな中、隅っこにうずくまっている女子を見る。
この子は田辺美奈(たなべみな)。
私の親友であり……私を殺した犯人だ。
ゲーム終了後屋上から突き落とされて私は死んだ。
でも仕方ないと思う。
だって私も……美奈を殺そうとしたからだ。
自分だけ生き残ればいいーーーーー
そう思ってた。
けど、そう思ってたから殺された。
でもその後美奈は自殺したらしいから、ここに来た。
私は深く反省してる。
そう伝えたい。
でも、そんなの偽りだって言われたら、怖い。
だから今は美奈とは距離をとり、疎遠になっている。
でも、いつかは伝えたい。私が地獄に行く前にーーー
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ガチャ。
なんだ?
「今からよばれる者はここへ来い」
来い?
ここから出られることなんて滅多になかったことなのに。
なんだろ。
「高梨真希(たかなしまき)、九条春香(くじょうはるか)、萩野神奈(はぎのかんな)、萩野杏奈(はぎのあんな)、佐伯ここな(さえき-)、南花南(みなみかなん)、時野明子(ときのめいこ)、一ノ瀬瑠樹(いちのせるき)」
これは…クラスメイトの名前だ。
死んだ順だ…
「畑咲(はたけさき)、大江戸奈々(おおえどなな)、羽田月美(はねだつきみ)、連野ひかる(れんの-)、大城みゆき(おおしろ-)、東条歩美(とうじょうあゆみ)、白宮瑠夏、田辺美奈
以上、平宮学園中学校1年B組」
懐かしい感じが蘇る。
…あれ?
何人か呼ばれてない子がいる。
秋山さやか(あきやま-)ちゃん、藤重明日香(ふじしげあすか)ちゃん、それに高木玲奈(たかぎれいな)ちゃんもいない。
豊橋秀美(とよはしひでみ)ちゃんも音和つかさ(おとわ-)ちゃんも三間葵(みまあおい)ちゃんもいない!
なんでだろう。みんな同じクラスなのに。
そして死んだはずなのに。
死んだふりして生きてたとか?
でも死んだって…
「全員こっちへこい」
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私たちが来たのはエレベーターの前。
奥に廊下があって、部屋が一つ。
エレベーターの前の広いスペースに、私たちは呼ばれた。
後ろにモニターがある。
何をするんだろう。
人が入ってきた。
「みなさんこんにちは」
…!
この声は…
今でも覚えている。
私たちを死に追いやった、あいつらだ。
「あやめグループの者です」
ドクンと心臓が不快な音を立てる。
「突然だが、今からお前たちには生き返りをかけたゲームをやらせる」
生き返り!?
みんなが騒がしい。
「後ろのモニターを見ろ」
全員一斉にモニターを見る。

『エレベーターゲーム
ルール
・ 2人1組でペアを作り、エレベーターに乗る。
・エレベーターのボタンで行き着く階が決まる。
・行き着く階で生死が決まる。2人の片方が死ぬ階、もう片方が死ぬ階、どちらも死ぬ階、どちらも生存する階がそれぞれ決まっている。
・ぺアの片方はどのボタンを押すとどの階に行くかを知っている。それを友達を助けるために使うか、復讐などに使うかは、その人使第。
・ここは死後の世界のため、ここでいう死とは存在自体が消えることを意味する。
・死んだ人を敗者とし、残った人を勝者とする。そして勝者となった人はゲーム終了まで専用の部屋で待機してもらい、ゲーム終了後生き返ることができる。』

…なるほど…
またアホみたいなゲームを思いついたもんだ。
「ゲームの様子はモニターで見れる。死ぬ人は、階の部屋の床に足を踏み入れた瞬間、床が開き亜空間へ落とされる」
亜空間?
「質問はあるか」
真っ先に私は手を挙げる。
「亜空間ってなんですか?」
「亜空間とは、何もない無音の真っ暗な空間だ。ここに落とされると、その人は存在自体が消え、永久に亜空間を漂うことになる」
何それ怖すぎ…
「存在自体が消えるって?」
次に質問したのは瑠樹ちゃんだ。
彼女はもうクラスメイトが死ぬのを見たくないと自殺した。
「そのままだ。例えば一ノ瀬瑠樹が亜空間に落とされると、一ノ瀬瑠樹という名前さえも消え、世界の人々の記憶から永久に消し去られる。友達でも、家族でも、例外はない。そして一ノ瀬瑠樹という人間がいた事実は、永久に消える」
そんな…
やはり怖い。
「だったら葵に会えないじゃん!」
瑠樹ちゃんは、葵ちゃんとここにいる春香ちゃんと親友だった。
偽りなき本当の友達だから、会いたいと願うのも仕方ない。
「他に質問はあるか」
私は手を挙げた。
「なぜ一部のクラスメイトがいないんですか?」
「あれは特別ルールで、生き残った人間チームと、自分の役職を明かした人狼チームは、生き残りになるという条件を満たしたからだ」
じゃあ、みんな生きてるんだ。
安心と共に役職を明かせば良かったという後悔が込み上げてくる。
「他に質問はあるか」
誰も手を挙げない。
「そうか。それじゃあ、ゲーム開始だ」