◯放送室(昼休み)
小雪が昼の校内放送をしている。
小雪『それでは、本日の校内放送を終了します。午後の授業も頑張りましょう』
放送卓のスイッチを切る。
小雪「……ふー」
放送室の扉が開く。
小雪「あれ、蓮どうしたの?編集?」
蓮「……昨日、梨里杏に告白した」
小雪「……そう」
蓮「……返事は急がないって言った」
小雪「やるじゃん」
蓮「どうしよう、絶対梨里杏のこと困らせた」
小雪「なんで?」
蓮「俺たちはずっと幼馴染で、そういう恋愛感情なんてなかったはずなんだ。ただの幼馴染で、ただ年が一つ違うだけの友だち」
小雪「でも梨里杏がどう思ってるかなんて、わからないでしょ」
蓮「それは、そうだけど」
小雪「自分の言葉に責任を持て。私がよく言ってるでしょ?」
蓮「そうだな」
小雪「今さらなんだから。可能な限り悔いの残らない道を進みなさい」
蓮「……さんきゅー」
◯放送室(放課後)
梨里杏と蓮の間に少し気まずい雰囲気が流れている。少し遅れて小雪が放送室に来た。
小雪「おつかれー」
梨里杏「あ、お疲れ様です」
蓮は脚本に集中しているからか、気づいていない。
小雪「ありゃー、蓮すごい集中力だね」
梨里杏「そうですね……」
小雪「よし、梨里杏、ちょっと付き合って」
梨里杏「良いですけど、何にですか?」
小雪「アナウンスの練習」
梨里杏「はい……?」
小雪と梨里杏は蓮を置き去りにして視聴覚室に向かった。
小雪「マイクとかはセットしてあるから、単純に私の読み聞いて気になることがあれば言って」
梨里杏「わかりました」
小雪「……100番、門田小雪。昨年度、南丘高校男子バレーボール部は、全日本バレーボール高等学校選手権大会、通称春の高校バレーで3連覇を達成しました……」
梨里杏(やっぱり……すごいな、本物のアナウンサーみたい。1分半の間に、伝えたいこと全部盛り込んでて、聞き取りやすくて……)
小雪「……次の目標は4連覇。新体制の南丘バレーに注目が集まります」
梨里杏は拍手した。
梨里杏「やっぱり、すごいですね、地区のときよりさらに良くなってる」
小雪「……ありがとね」
梨里杏「これなら全国だって」
小雪「それはどうだろう」
梨里杏「え?」
小雪「全国大会はもちろん、県大会もかなりレベルが高い。今までかすりもしなかった」
梨里杏「でも、今までの中で1番良いと思いますよ……?」
小雪「……よし、ガールズトークでもしようじゃないか」
梨里杏「なんですか急に……わ、私話せるようなネタなんて……」
梨里杏の頭には一瞬蓮のことが浮かんだが、すぐ消しさった。
小雪「じゃあ私の好きな人の話を聞いてくれ」
梨里杏「へっ……!?」
梨里杏は顔を赤らめた。
小雪「寝ても覚めても、授業中もずっとその人のことを考えてしまうんだ……いつもそばにいるのに、私の一方的な思いが届かない……」
梨里杏「そ、そんなに好きな人がいたんですか……!?」
小雪「そう……私は、放送に恋しているのさ!」
梨里杏「……はい?」
梨里杏が勝手に妄想していたイケメン像が、パリーンと崩れた。
小雪「寝ても覚めても原稿のことを考えて、授業中も先生の目を盗んで原稿の修正をして ……!これを恋と呼ばずになんと呼ぶだろうか!」
小雪が意気揚々と語る中、梨里杏は呆然としている。
小雪「そういう意味では、梨里杏も蓮も放送に恋しているんじゃないか?」
梨里杏「わ、私も……?」
小雪「ま、私には敵わないかもしれないけどな!」
梨里杏「私は……」
小雪「梨里杏は、蓮のことどう思ってるの?」
梨里杏「え!?な、なんで」
小雪の唐突な問いに梨里杏は驚いた。
小雪「嫌いでは、ないんだろう?」
梨里杏「そりゃ、嫌いだったらこんなにずっといないですし……」
小雪「嫌いだったら恋愛ラジドラの彼女役なんて引き受けないしな」
梨里杏「た、たしかに……」
小雪「私は放送以外に恋したことがないからわからないけど、好きな気持ちには正直になったら良いと思うよ」
小雪は笑いながらアナウンスの練習に戻った。梨里杏はその場に立ち尽くしている。
梨里杏「寝ても覚めても考えてる……か」
梨里杏(私にはそこまでの覚悟がない……でも、良い作品作って、2人と全国に行きたいし、それに蓮との約束もある。ちゃんと考えなきゃ)
梨里杏は放送室に戻った。
◯放送室(放課後)
梨里杏「……蓮」
蓮「お、梨里杏」
梨里杏「脚本の調子はどう?」
蓮「悪い、ほぼ録り直しになりそうだ」
梨里杏「大丈夫!良い作品にするためだもん」
蓮「じゃあ今週の土曜日一気に録音しちゃおう」
梨里杏「りょーかい」
◯放送室(土曜日、朝)
蓮と梨里杏は録音ブースにいる。
蓮「よし……やるぞ」
梨里杏(蓮への気持ちを正直に……)
蓮「梨里杏?どうした?」
梨里杏「あ、え、なんでもないよ!」
蓮「なら良いけど……今日は午前中しか使えないから、さくさく進めよう」
梨里杏「う、うん」
蓮と梨里杏はひたすら録音をする。
梨里杏『あの星、綺麗……なんて言うんだろ』
蓮「……悪い、止めていいか」
梨里杏「え、だめだった……?」
蓮「だめじゃないんだが、足りない」
梨里杏「え……」
蓮「あ、いや、今のままでも十分良いんだが、百合なら……梨里杏ならもっとやれる気がして」
梨里杏「……そう、なのかな」
蓮「んー……ってもう12時近いな」
梨里杏「谷口先生に、明日もやっていいか聞きに行こ」
蓮「だな」
◯職員室(土曜日、昼)
梨里杏・蓮「失礼します」
谷口「おーおー、2人も揃ってどうした」
蓮「明日も、録音したいです」
梨里杏「あとほんのちょっとなんです!」
梨里杏・蓮「お願いします!」
谷口「……明日も午前中だけなら、大丈夫だ。ちゃんと門田にも報告しとけよ」
梨里杏「……!」
梨里杏・蓮「ありがとうございます!」
谷口「「おう、今日はもう帰れ、んで明日に備えろ」
◯梨里杏の部屋(夜)
梨里杏「はぁ、だめだったなぁ……明日は頑張らなきゃ」
梨里杏はスマホを枕元に置いた。
梨里杏「蓮への気持ち……私、いつから蓮のこと好きだったんだろう」
梨里杏「……最初はただの友だちだと思ってたけど、高校に入学して、放送部に入って、蓮がどんどんかっこよくなってくのを見て……」
梨里杏「ラジドラで、本当に好きになった」
梨里杏はスマホのアラームを設定した。
梨里杏「私は、蓮のことが好きだ。大丈夫、やれる」
◯放送室(日曜日、朝)
梨里杏と蓮は昨日より真剣な表情をして録音ブースに入った。
梨里杏「よし……頑張ろう」
蓮「おう」
梨里杏「私は準備ばっちりだよ」
蓮「じゃ、昨日の続きから録るか」
蓮は録音ボタンを押した。
梨里杏『綺麗……あの星、なんて言うんだろ』
蓮「……良いな」
梨里杏「ほんと?!」
蓮「ああ、昨日よりぐんと良くなってる」
良いペースで録音を続ける。
蓮「次だ……」
蓮は録音ボタンを押した。
梨里杏『私も……蓮のこと、ずっと大好きだよ』
蓮「……っ」
梨里杏「蓮?」
蓮「今のっ……めっちゃ良い」
梨里杏「よかったぁ」
蓮「あとは……クレジットとタイトルコールか」
梨里杏「先クレジット録っちゃおう」
梨里杏『制作は、南丘高校放送部でした』
蓮「これは大丈夫だな」
梨里杏「最後はタイトルコールだよね、題名はどっちが言う?変える?」
蓮「……2人で言うのはどうだろう」
梨里杏「いいね!それ!」
蓮は録音ボタンを押した。
梨里杏『創作ラジオドラマ』
梨里杏・蓮『あの日をもう一度』
小雪が昼の校内放送をしている。
小雪『それでは、本日の校内放送を終了します。午後の授業も頑張りましょう』
放送卓のスイッチを切る。
小雪「……ふー」
放送室の扉が開く。
小雪「あれ、蓮どうしたの?編集?」
蓮「……昨日、梨里杏に告白した」
小雪「……そう」
蓮「……返事は急がないって言った」
小雪「やるじゃん」
蓮「どうしよう、絶対梨里杏のこと困らせた」
小雪「なんで?」
蓮「俺たちはずっと幼馴染で、そういう恋愛感情なんてなかったはずなんだ。ただの幼馴染で、ただ年が一つ違うだけの友だち」
小雪「でも梨里杏がどう思ってるかなんて、わからないでしょ」
蓮「それは、そうだけど」
小雪「自分の言葉に責任を持て。私がよく言ってるでしょ?」
蓮「そうだな」
小雪「今さらなんだから。可能な限り悔いの残らない道を進みなさい」
蓮「……さんきゅー」
◯放送室(放課後)
梨里杏と蓮の間に少し気まずい雰囲気が流れている。少し遅れて小雪が放送室に来た。
小雪「おつかれー」
梨里杏「あ、お疲れ様です」
蓮は脚本に集中しているからか、気づいていない。
小雪「ありゃー、蓮すごい集中力だね」
梨里杏「そうですね……」
小雪「よし、梨里杏、ちょっと付き合って」
梨里杏「良いですけど、何にですか?」
小雪「アナウンスの練習」
梨里杏「はい……?」
小雪と梨里杏は蓮を置き去りにして視聴覚室に向かった。
小雪「マイクとかはセットしてあるから、単純に私の読み聞いて気になることがあれば言って」
梨里杏「わかりました」
小雪「……100番、門田小雪。昨年度、南丘高校男子バレーボール部は、全日本バレーボール高等学校選手権大会、通称春の高校バレーで3連覇を達成しました……」
梨里杏(やっぱり……すごいな、本物のアナウンサーみたい。1分半の間に、伝えたいこと全部盛り込んでて、聞き取りやすくて……)
小雪「……次の目標は4連覇。新体制の南丘バレーに注目が集まります」
梨里杏は拍手した。
梨里杏「やっぱり、すごいですね、地区のときよりさらに良くなってる」
小雪「……ありがとね」
梨里杏「これなら全国だって」
小雪「それはどうだろう」
梨里杏「え?」
小雪「全国大会はもちろん、県大会もかなりレベルが高い。今までかすりもしなかった」
梨里杏「でも、今までの中で1番良いと思いますよ……?」
小雪「……よし、ガールズトークでもしようじゃないか」
梨里杏「なんですか急に……わ、私話せるようなネタなんて……」
梨里杏の頭には一瞬蓮のことが浮かんだが、すぐ消しさった。
小雪「じゃあ私の好きな人の話を聞いてくれ」
梨里杏「へっ……!?」
梨里杏は顔を赤らめた。
小雪「寝ても覚めても、授業中もずっとその人のことを考えてしまうんだ……いつもそばにいるのに、私の一方的な思いが届かない……」
梨里杏「そ、そんなに好きな人がいたんですか……!?」
小雪「そう……私は、放送に恋しているのさ!」
梨里杏「……はい?」
梨里杏が勝手に妄想していたイケメン像が、パリーンと崩れた。
小雪「寝ても覚めても原稿のことを考えて、授業中も先生の目を盗んで原稿の修正をして ……!これを恋と呼ばずになんと呼ぶだろうか!」
小雪が意気揚々と語る中、梨里杏は呆然としている。
小雪「そういう意味では、梨里杏も蓮も放送に恋しているんじゃないか?」
梨里杏「わ、私も……?」
小雪「ま、私には敵わないかもしれないけどな!」
梨里杏「私は……」
小雪「梨里杏は、蓮のことどう思ってるの?」
梨里杏「え!?な、なんで」
小雪の唐突な問いに梨里杏は驚いた。
小雪「嫌いでは、ないんだろう?」
梨里杏「そりゃ、嫌いだったらこんなにずっといないですし……」
小雪「嫌いだったら恋愛ラジドラの彼女役なんて引き受けないしな」
梨里杏「た、たしかに……」
小雪「私は放送以外に恋したことがないからわからないけど、好きな気持ちには正直になったら良いと思うよ」
小雪は笑いながらアナウンスの練習に戻った。梨里杏はその場に立ち尽くしている。
梨里杏「寝ても覚めても考えてる……か」
梨里杏(私にはそこまでの覚悟がない……でも、良い作品作って、2人と全国に行きたいし、それに蓮との約束もある。ちゃんと考えなきゃ)
梨里杏は放送室に戻った。
◯放送室(放課後)
梨里杏「……蓮」
蓮「お、梨里杏」
梨里杏「脚本の調子はどう?」
蓮「悪い、ほぼ録り直しになりそうだ」
梨里杏「大丈夫!良い作品にするためだもん」
蓮「じゃあ今週の土曜日一気に録音しちゃおう」
梨里杏「りょーかい」
◯放送室(土曜日、朝)
蓮と梨里杏は録音ブースにいる。
蓮「よし……やるぞ」
梨里杏(蓮への気持ちを正直に……)
蓮「梨里杏?どうした?」
梨里杏「あ、え、なんでもないよ!」
蓮「なら良いけど……今日は午前中しか使えないから、さくさく進めよう」
梨里杏「う、うん」
蓮と梨里杏はひたすら録音をする。
梨里杏『あの星、綺麗……なんて言うんだろ』
蓮「……悪い、止めていいか」
梨里杏「え、だめだった……?」
蓮「だめじゃないんだが、足りない」
梨里杏「え……」
蓮「あ、いや、今のままでも十分良いんだが、百合なら……梨里杏ならもっとやれる気がして」
梨里杏「……そう、なのかな」
蓮「んー……ってもう12時近いな」
梨里杏「谷口先生に、明日もやっていいか聞きに行こ」
蓮「だな」
◯職員室(土曜日、昼)
梨里杏・蓮「失礼します」
谷口「おーおー、2人も揃ってどうした」
蓮「明日も、録音したいです」
梨里杏「あとほんのちょっとなんです!」
梨里杏・蓮「お願いします!」
谷口「……明日も午前中だけなら、大丈夫だ。ちゃんと門田にも報告しとけよ」
梨里杏「……!」
梨里杏・蓮「ありがとうございます!」
谷口「「おう、今日はもう帰れ、んで明日に備えろ」
◯梨里杏の部屋(夜)
梨里杏「はぁ、だめだったなぁ……明日は頑張らなきゃ」
梨里杏はスマホを枕元に置いた。
梨里杏「蓮への気持ち……私、いつから蓮のこと好きだったんだろう」
梨里杏「……最初はただの友だちだと思ってたけど、高校に入学して、放送部に入って、蓮がどんどんかっこよくなってくのを見て……」
梨里杏「ラジドラで、本当に好きになった」
梨里杏はスマホのアラームを設定した。
梨里杏「私は、蓮のことが好きだ。大丈夫、やれる」
◯放送室(日曜日、朝)
梨里杏と蓮は昨日より真剣な表情をして録音ブースに入った。
梨里杏「よし……頑張ろう」
蓮「おう」
梨里杏「私は準備ばっちりだよ」
蓮「じゃ、昨日の続きから録るか」
蓮は録音ボタンを押した。
梨里杏『綺麗……あの星、なんて言うんだろ』
蓮「……良いな」
梨里杏「ほんと?!」
蓮「ああ、昨日よりぐんと良くなってる」
良いペースで録音を続ける。
蓮「次だ……」
蓮は録音ボタンを押した。
梨里杏『私も……蓮のこと、ずっと大好きだよ』
蓮「……っ」
梨里杏「蓮?」
蓮「今のっ……めっちゃ良い」
梨里杏「よかったぁ」
蓮「あとは……クレジットとタイトルコールか」
梨里杏「先クレジット録っちゃおう」
梨里杏『制作は、南丘高校放送部でした』
蓮「これは大丈夫だな」
梨里杏「最後はタイトルコールだよね、題名はどっちが言う?変える?」
蓮「……2人で言うのはどうだろう」
梨里杏「いいね!それ!」
蓮は録音ボタンを押した。
梨里杏『創作ラジオドラマ』
梨里杏・蓮『あの日をもう一度』


