◯駅(日曜日、朝)

梨里杏「蓮、おまたせ!待った?」
蓮「いや、俺も今ついたとこ」
梨里杏「じゃあ行こっか!」
蓮「お、おう」
蓮(梨里杏の私服見るの……久々だな)
梨里杏(蓮の私服って意外とおしゃれだな……)

2人は悶々と考えながらプラネタリウムに向かう。


◯プラネタリウム入口

蓮「お、受付が全部チケットになってる」
梨里杏「ほんとだ……並ばなくていいんだ」
蓮「前来たときは行列だったよなぁ」
梨里杏「そういえばそうだったかも」

2人は券売機に行きチケットを買う。

梨里杏「始まるまであと30分くらいあるんだ」
蓮「どうする?」
梨里杏「あ、あそこに売店あるからそこ見てよ」
蓮「おっけー」

2人は売店に向かい、店の中を歩き回る。

梨里杏「わ、これかわいい……」
蓮「星座のストラップ?」
梨里杏「そうそう!おとめ座ないかな……あ、ちょっと高いな」
蓮「金あんまり持ってきてないのか?」
梨里杏「最近ちょっと金欠ぎみでさ……あ、でも今日遊ぶぶんには全く問題ないから大丈夫!」
蓮「ふーん……」
梨里杏「興味なさそうな返事しないでよー」
蓮「いやぁ、別にぃ……」

蓮はストラップを見つめる。

梨里杏「他にもいろいろ売ってるんだね、なにこれ宇宙クッキー?」
蓮「すっごい色してるなこれ」
梨里杏「なんか似たようなお菓子どこかに売ってた気が……食べたことないけど」
蓮「俺もないな」
アナウンス「ご来場の皆さまにご連絡いたします。まもなく、プラネタリウム午前の部が開場いたします……」
梨里杏「そろそろ行こっか」
蓮「おう」

2人はプラネタリウム内に移動する。

梨里杏「寝ながら見れるようになってるんだ……!?」
蓮「調べてきてないのかよ」
梨里杏「時間と金額しか見てなかった……」
蓮「ははっ、ちょっと抜けてるあたり梨里杏らしいな」

蓮は笑いながら話した。

梨里杏「むぅ……で、この場合って席自由なの?」
蓮「今回は自由らしいから……折角だし真ん中の方行くか」

2人は真ん中に移動し、寝転がる。

梨里杏「ちょっと悪いことしてる気分」
蓮「わかる」
梨里杏「でも気持ちいいな、ふかふかだ」
蓮「寝ちまいそう……」
梨里杏「だめだよ寝たら」
アナウンス「ただいまから午前の部のプラネタリウムを開始いたします」

会場が少しずつ暗くなり、モニターに星空が映し出された。

梨里杏「わ、綺麗……」

梨里杏が小さい声で呟く。

蓮「お前のほうが……」

蓮はなにか言いかけてそっと口を閉じた。梨里杏には聞こえていなかったようだ。

アナウンス「……それでは夏の星座を見てみましょう。代表的なのは……」

蓮は内容まで頭にあまり入ってきていない。

アナウンス「おとめ座は、牡牛座、山羊座、蟹座の相性が良いと言われています」
蓮(え……まじで?)

蓮は山羊座のようだ。あれこれ考えてるうちに、上映が終わっていた。

梨里杏「んー!面白かった!」
蓮「そ、そうだな」
梨里杏「私お手洗い行ってくるから先玄関で待ってて」
蓮「わかった」

梨里杏と蓮はプラネタリウム入口で別れた。蓮は売店に向かった。

蓮「……乙女座……あった。ん、山羊座もあるのか……値ははるけど仕方ない」

蓮はさっきの星座ストラップを買い、玄関に向かった。少し経つと梨里杏が戻ってきた。

梨里杏「ごめん!おまたせ」
蓮「次どうする?」
梨里杏「隣のカフェ行って軽くご飯食べよ!」

2人はカフェに移動し、席についた。

◯カフェ(昼)

梨里杏「いっぱいあって悩んじゃう……!」
蓮「俺はもう決めた」
梨里杏「え、はやっ!」
蓮「ゆっくりで良いからな」
梨里杏「えーっと、えーと、これにしよ。すみませーん」

近くにいた店員を呼ぶ。

梨里杏「ふわふわパンケーキとアイスココアください!」
蓮「トーストとコーヒーお願いします」
店員「かしこまりました」
梨里杏「……ちょっと大人ぶってない?」
蓮「別に……」
梨里杏「さっきのプラネタリウム面白かったなぁ」
蓮「俺は少し寝そうだった」
梨里杏「もー、それ最初も行ってたじゃん」
蓮「でも……綺麗だったな」
梨里杏「ね!本当に星空見てるみたいですっごいロマンチックだった」
蓮「……あ、そうだ。はい、これ」
梨里杏「?なにこれ」
蓮「開けてみて」

梨里杏は蓮からもらった袋を開ける。

梨里杏「!これ、さっきの!」

蓮は山羊座のストラップを取り出す。

蓮「……お、おそろいってことで」
梨里杏「いいの!?ありがと……!」
蓮「気に入ってそうだったし、これは俺からの感謝」
梨里杏「え?」
蓮「元はといえばこの脚本作ったの俺だからさ、いろいろ付き合わせちゃってるというかなんというか」
梨里杏「……そんなの、気にしなくていいのに。でも、ありがとね」

プラネタリウムの感想を言い合っていると、注文したものが運ばれてきた。

梨里杏・蓮「いただきます」
梨里杏「んー!ふわふわ!」
蓮「ん、美味いな」
梨里杏「来てよかったぁ」
蓮「……なあ、食べながらで悪いんだけど脚本の話してもいいか」
梨里杏「私もちょっとしたかったから、いいよ」

蓮はメモ帳を取り出した。

梨里杏「メモ帳なんて持ってたんだ」
蓮「結構まとめてるんだよ」
梨里杏「ふぅん」

梨里杏はパンケーキを食べながらメモ帳を見つめた。

梨里杏「やっぱり中盤から後半にかけてがまだ違和感あるよね」
蓮「そうなんだよなぁ」
梨里杏「インパクト……でも自然に」
蓮「いっそ失恋するってエンドもありか……?」
梨里杏「させないよ」

梨里杏はフォークを置く。蓮は少し驚いて梨里杏の方を見る。

梨里杏「蓮は百合のこと大好きなんだから、ずっと一緒にいる。失恋なんてさせないよ」
蓮「お前……かっこいいな」
梨里杏「……ま、まあ暗い終わり方したくないなって思っただけだし」
蓮「あ」

蓮はふとなにか思いつく。

蓮「今日のこと、脚本にしないか?」
梨里杏「え?」
蓮「デートの取材だから……多少は使えると思うんだよ……」
梨里杏「なるほどね」
蓮「……いいか?」
梨里杏「いいよ、経験したこと詰め込んだらリアリティ増すだろうし」
蓮「さんきゅーな」

蓮はメモに今日のことを書き出す。

蓮「百合をプラネタリウムに誘う、きれいな星空を眺めて……なんか足りないな」
梨里杏「百合と蓮、幼馴染にしたらどう?」
蓮「え?」
梨里杏「そっちのほうが書きやすくないかな、今回私たちが昔行ったことのある場所に来たわけだし、そういう回想シーンあったら聞いてる人も2人の関係性わかりやすくなるだろうし」
蓮「……良いのか、それで」
梨里杏「なにが?」
蓮「自分のことを、恋愛の脚本に投影させるんだぞ」
梨里杏「なんにも問題ないよ、だって私じゃなくて百合と蓮の物語なんだからさ」
蓮「……そうか」

蓮はメモ帳に今日のことを書き出した。

梨里杏「でも変な感じだね、私たちで恋愛の話作るなんて」
蓮「……なあ」

蓮は手を止めて梨里杏の方を向く。

蓮「蓮の、俺の言葉が嘘じゃないって言ったら、どうする」
梨里杏「……え」
蓮「好きだ、小さい頃から、ずっと」

突然の告白に梨里杏はかたまる。2人は特に会話もせず、食べ終わり、そのまま解散することになった。

梨里杏「えっと、今日はありがとう、楽しかった」
蓮「……さっきの話、急がないから。部活に集中したいだろうし」
梨里杏「……うん」