◯放送室(放課後)
地区大会の次の日。梨里杏、小雪、蓮は放送室に集まっていた。
小雪「諸君、地区大会お疲れ様……次は県大会だ」
梨里杏「県大会まで1ヶ月弱……テストもあるからそんなに作業できないや」
小雪「と、思っただろう」
顧問の谷口が放送室に入ってきた。
梨里杏「へ?」
小雪「なんとタニセンが……考査前部活動特別練習許可を取ってくれました!」
梨里杏・蓮「え!?」
蓮「それって、吹奏楽とか運動部にしか降りないやつでは……!?」
小雪「タニセン曰く、3人とも考査で赤点ギリギリじゃないとか、県大会までのスケジュールとか校長にプレゼンしたらしくてさ」
蓮「タニセン……っ!」
梨里杏「イケメン……っ!」
谷口「おいおいそんなに言ったら照れるだろ」
梨里杏「でもまさか許可が降りるなんて思ってなくて……!」
谷口「それだけお前らに期待してるってことだ……アナウンスを勝ち残った小雪部長も、最優秀賞を取ったラジドラも、改良を重ねれば必ず全国への切符へ近づける。あの大舞台の景色を、味わってほしいんだ」
蓮「全国への切符……」
谷口「とはいえ考査で赤点取ったら県大会行けないからな」
梨里杏「あっそうだった……」
谷口「ま、どっちも頑張れよ」
谷口は放送室から出ていった。
小雪「というわけで今日からはラジドラ1本に集中しよう」
梨里杏「でも先輩アナウンスのほうがあるんじゃ」
小雪「個別でも練習できるからいいの、ラジドラのほうが大変なんだから」
蓮「俺まだ講評見てないんだけど」
梨里杏「あ、私も」
小雪「ちゃーんと封筒預かってますよ。まずは表彰状ね」
小雪は三枚の表彰状を取り出した。
小雪「ラジドラのは後で飾るとして……はい、梨里杏」
梨里杏に、朗読部門9位、河野梨里杏と書かれた表彰状が渡される。
梨里杏「……そっか」
小雪「……これは梨里杏が自分で勝ち取ったものだから、大事にするんだよ」
梨里杏「……もちろんですっ、初めてですから」
梨里杏はもらった表彰状をじっくり眺める。
蓮「んで、講評……え、89点つけてくれた人いる」
梨里杏「え!?」
蓮「確か県大会出場点数目安って75点以上……まじか」
梨里杏「89、76、79、81……あ、67もある」
小雪「やっぱり厳しい人は厳しいね、にしてもいつもどおり書いてることみんなバラバラ……」
『テーマは良い、けれどキャラクターの心が届いてこない』
『間も効果音も適切』
『構成もっとシンプルでも良いのでは?詰め込みすぎなように感じる』
『ピュアな高校生の恋愛に思わずきゅんとしました』
梨里杏「……もっとリアルな恋愛表現があっても良いのでは……って、え?」
蓮「リアルな恋愛表現って……結構頑張ったぞ」
小雪「んー……リアルな恋愛表現か」
3人は講評をじっくり眺める。小雪はホワイトボードとペンを取り出し、審査員に指摘された点や自分たちで改善したいと思う点などを書き出した。
梨里杏「最後もっと余韻があっても良いのかも」
蓮「秒数少し余裕あるからまだ詰めれるかもな」
梨里杏「あと蓮も発声練習参加したほうが良いかもね」
蓮「ぐ……確かに」
小雪「それもだけど」
小雪が立ち上がる。
小雪「ラジドラ、いや君たちに圧倒的に足りないもの……それは、青春のような甘酸っぱい恋愛表現だ!」
蓮「今心にぐさっときた……」
梨里杏「って言っても私と蓮はあくまでも幼馴染ですよ?これ以上の表現が思いつかないというか……」
小雪「ならば!表現の引き出しを増やすんだ!」
梨里杏「というと?」
小雪「次の日曜日、2人でデートに行って来い!」
梨里杏・蓮「えっ!?」
梨里杏と蓮は顔を赤らめる。
小雪「いいねぇその反応!今日は木曜日だから、土曜日までに各自予定をたてて発表。で、日曜日実践。どう?」
蓮「に、日曜日暇ではあるけど……」
梨里杏「わ、私も大丈夫ですが……」
小雪「幼馴染なんだろう?普通に遊びに行くだけじゃないか。デートという名の取材だ。それに、大会終わったばっかりなんだから少しくらい羽を伸ばしても良いんじゃないかな」
蓮「取材って……それなら地区大会の前にやるべきだったな……」
蓮(たしかに日曜日は部活ないしな……腹くくるしかない)
蓮「り、梨里杏。デ、デート行こうじゃないか」
梨里杏「まぁ普通にお出かけするって思えば良いもんね」
小雪はニヤニヤしながら2人を見ている。
小雪「じゃあ各自デートプランを考えて土曜日に発表ということで!」
蓮(小雪随分楽しそうだな……)
◯梨里杏の部屋(夜)
梨里杏「デート、か」
梨里杏は携帯でデートのおすすめスポットを調べる。
梨里杏「いやデートじゃないしっ!」
梨里杏「遊園地、動物園、水族館……ベタだなぁ」
梨里杏は悩む。
梨里杏「お母さんに相談してみようかな」
梨里杏は自室を出てリビングに向かう。
梨里杏の家のリビング
梨里杏「ねぇお母さん、ちょっといい?」
梨里杏母「あら、どうしたの?」
梨里杏「今週の日曜日、蓮と出かけてくるんだけどどこ行けばいいかなぁ」
梨里杏母「もしかして……デートかしら?」
梨里杏「ち、違うよ!一緒に出かけて遊ぶだけだよ!」
梨里杏母「それを世間一般ではデートというのだけれど……まあいいわ、場所選びに悩んでるの?」
梨里杏「うん、いろいろ調べたんだけどどれもいまいちピンとこなくて」
梨里杏母「うーん……あ、隣町のプラネタリウム行ったらどう?」
梨里杏「プラネタリウム?」
梨里杏母「昔、蓮くんのお父さんに連れてってもらったことあるの、覚えてる?」
梨里杏「……あ!幼稚園のとき?」
梨里杏母「そうそう!最近リニューアルオープンしたらしいし、ちょうど良いんじゃない?」
梨里杏「行ってみる!ありがとう!」
◯放送室(土曜日、朝)
小雪「それではデートプランを発表していこうじゃないか、じゃあまず蓮から!」
蓮「あー……まあ無難に水族館と遊園地」
小雪「1日でまわりきれるのかい」
蓮「あと……プラネタリウム」
梨里杏「えっ」
小雪「随分多いな……」
梨里杏「私、プラネタリウム選んだ」
蓮「えっ!?」
小雪「お、被ったか……もしかして2人ともプラネタリウムに思い出がある感じ?」
梨里杏「昔蓮のお父さんに連れてってもらったことがあって。最近リニューアルオープンしたらしいから良いかなぁって思って!調べたら近くにカフェとかもあるみたいなのでお出かけにぴったりで……!」
蓮「ま、まじか……」
小雪「蓮は?」
蓮「水族館と遊園地は出かけるのに無難かなって思ったのと、プラネタリウムは昔梨里杏と行って楽しそうにしてたから……ってので選んだ」
梨里杏「……ぶっちゃけあんまり細かいこと覚えてなくて……」
小雪「じゃあ明日はその二人の思い出のプラネタリウムに行く……ってことで良いかな?」
蓮「だな」
梨里杏「行ってきます!」
小雪「うんうん、楽しんでおいで」
地区大会の次の日。梨里杏、小雪、蓮は放送室に集まっていた。
小雪「諸君、地区大会お疲れ様……次は県大会だ」
梨里杏「県大会まで1ヶ月弱……テストもあるからそんなに作業できないや」
小雪「と、思っただろう」
顧問の谷口が放送室に入ってきた。
梨里杏「へ?」
小雪「なんとタニセンが……考査前部活動特別練習許可を取ってくれました!」
梨里杏・蓮「え!?」
蓮「それって、吹奏楽とか運動部にしか降りないやつでは……!?」
小雪「タニセン曰く、3人とも考査で赤点ギリギリじゃないとか、県大会までのスケジュールとか校長にプレゼンしたらしくてさ」
蓮「タニセン……っ!」
梨里杏「イケメン……っ!」
谷口「おいおいそんなに言ったら照れるだろ」
梨里杏「でもまさか許可が降りるなんて思ってなくて……!」
谷口「それだけお前らに期待してるってことだ……アナウンスを勝ち残った小雪部長も、最優秀賞を取ったラジドラも、改良を重ねれば必ず全国への切符へ近づける。あの大舞台の景色を、味わってほしいんだ」
蓮「全国への切符……」
谷口「とはいえ考査で赤点取ったら県大会行けないからな」
梨里杏「あっそうだった……」
谷口「ま、どっちも頑張れよ」
谷口は放送室から出ていった。
小雪「というわけで今日からはラジドラ1本に集中しよう」
梨里杏「でも先輩アナウンスのほうがあるんじゃ」
小雪「個別でも練習できるからいいの、ラジドラのほうが大変なんだから」
蓮「俺まだ講評見てないんだけど」
梨里杏「あ、私も」
小雪「ちゃーんと封筒預かってますよ。まずは表彰状ね」
小雪は三枚の表彰状を取り出した。
小雪「ラジドラのは後で飾るとして……はい、梨里杏」
梨里杏に、朗読部門9位、河野梨里杏と書かれた表彰状が渡される。
梨里杏「……そっか」
小雪「……これは梨里杏が自分で勝ち取ったものだから、大事にするんだよ」
梨里杏「……もちろんですっ、初めてですから」
梨里杏はもらった表彰状をじっくり眺める。
蓮「んで、講評……え、89点つけてくれた人いる」
梨里杏「え!?」
蓮「確か県大会出場点数目安って75点以上……まじか」
梨里杏「89、76、79、81……あ、67もある」
小雪「やっぱり厳しい人は厳しいね、にしてもいつもどおり書いてることみんなバラバラ……」
『テーマは良い、けれどキャラクターの心が届いてこない』
『間も効果音も適切』
『構成もっとシンプルでも良いのでは?詰め込みすぎなように感じる』
『ピュアな高校生の恋愛に思わずきゅんとしました』
梨里杏「……もっとリアルな恋愛表現があっても良いのでは……って、え?」
蓮「リアルな恋愛表現って……結構頑張ったぞ」
小雪「んー……リアルな恋愛表現か」
3人は講評をじっくり眺める。小雪はホワイトボードとペンを取り出し、審査員に指摘された点や自分たちで改善したいと思う点などを書き出した。
梨里杏「最後もっと余韻があっても良いのかも」
蓮「秒数少し余裕あるからまだ詰めれるかもな」
梨里杏「あと蓮も発声練習参加したほうが良いかもね」
蓮「ぐ……確かに」
小雪「それもだけど」
小雪が立ち上がる。
小雪「ラジドラ、いや君たちに圧倒的に足りないもの……それは、青春のような甘酸っぱい恋愛表現だ!」
蓮「今心にぐさっときた……」
梨里杏「って言っても私と蓮はあくまでも幼馴染ですよ?これ以上の表現が思いつかないというか……」
小雪「ならば!表現の引き出しを増やすんだ!」
梨里杏「というと?」
小雪「次の日曜日、2人でデートに行って来い!」
梨里杏・蓮「えっ!?」
梨里杏と蓮は顔を赤らめる。
小雪「いいねぇその反応!今日は木曜日だから、土曜日までに各自予定をたてて発表。で、日曜日実践。どう?」
蓮「に、日曜日暇ではあるけど……」
梨里杏「わ、私も大丈夫ですが……」
小雪「幼馴染なんだろう?普通に遊びに行くだけじゃないか。デートという名の取材だ。それに、大会終わったばっかりなんだから少しくらい羽を伸ばしても良いんじゃないかな」
蓮「取材って……それなら地区大会の前にやるべきだったな……」
蓮(たしかに日曜日は部活ないしな……腹くくるしかない)
蓮「り、梨里杏。デ、デート行こうじゃないか」
梨里杏「まぁ普通にお出かけするって思えば良いもんね」
小雪はニヤニヤしながら2人を見ている。
小雪「じゃあ各自デートプランを考えて土曜日に発表ということで!」
蓮(小雪随分楽しそうだな……)
◯梨里杏の部屋(夜)
梨里杏「デート、か」
梨里杏は携帯でデートのおすすめスポットを調べる。
梨里杏「いやデートじゃないしっ!」
梨里杏「遊園地、動物園、水族館……ベタだなぁ」
梨里杏は悩む。
梨里杏「お母さんに相談してみようかな」
梨里杏は自室を出てリビングに向かう。
梨里杏の家のリビング
梨里杏「ねぇお母さん、ちょっといい?」
梨里杏母「あら、どうしたの?」
梨里杏「今週の日曜日、蓮と出かけてくるんだけどどこ行けばいいかなぁ」
梨里杏母「もしかして……デートかしら?」
梨里杏「ち、違うよ!一緒に出かけて遊ぶだけだよ!」
梨里杏母「それを世間一般ではデートというのだけれど……まあいいわ、場所選びに悩んでるの?」
梨里杏「うん、いろいろ調べたんだけどどれもいまいちピンとこなくて」
梨里杏母「うーん……あ、隣町のプラネタリウム行ったらどう?」
梨里杏「プラネタリウム?」
梨里杏母「昔、蓮くんのお父さんに連れてってもらったことあるの、覚えてる?」
梨里杏「……あ!幼稚園のとき?」
梨里杏母「そうそう!最近リニューアルオープンしたらしいし、ちょうど良いんじゃない?」
梨里杏「行ってみる!ありがとう!」
◯放送室(土曜日、朝)
小雪「それではデートプランを発表していこうじゃないか、じゃあまず蓮から!」
蓮「あー……まあ無難に水族館と遊園地」
小雪「1日でまわりきれるのかい」
蓮「あと……プラネタリウム」
梨里杏「えっ」
小雪「随分多いな……」
梨里杏「私、プラネタリウム選んだ」
蓮「えっ!?」
小雪「お、被ったか……もしかして2人ともプラネタリウムに思い出がある感じ?」
梨里杏「昔蓮のお父さんに連れてってもらったことがあって。最近リニューアルオープンしたらしいから良いかなぁって思って!調べたら近くにカフェとかもあるみたいなのでお出かけにぴったりで……!」
蓮「ま、まじか……」
小雪「蓮は?」
蓮「水族館と遊園地は出かけるのに無難かなって思ったのと、プラネタリウムは昔梨里杏と行って楽しそうにしてたから……ってので選んだ」
梨里杏「……ぶっちゃけあんまり細かいこと覚えてなくて……」
小雪「じゃあ明日はその二人の思い出のプラネタリウムに行く……ってことで良いかな?」
蓮「だな」
梨里杏「行ってきます!」
小雪「うんうん、楽しんでおいで」


