あのたぬき親父完全に面白がっているな…。
フーッと息を吐き如月は隣に座る千紗を覗き込む。
千紗はストラップをなん度も手探りで確かめながら、嬉しそうに微笑んでいた。
彼女がこれほど嬉しそうなのだからこれ以上言う事は無い。
そう如月は思い、今度は俺が何かもっといいストラップを買ってあげなくてはと心に誓った。
久しぶりに2人で居酒屋のカウンターで、肩を並べて夕飯を食べる。
如月は千紗が隣にいるだけで不思議と気持ちが落ち着いて癒された。この1か月の怒涛のような忙しい毎日でさえも、この日の為だったのだのだと思うほどに全てが浄化されていった。
千紗もまた、如月が側にいてくれるだけで安心と安らぎを得ていた。
「千紗は卵料理が好きなのか?」
定食の副菜についていただし巻き卵を、目を輝かせて食べている姿に見惚れてしまう。
もともと綺麗な子だったが、5年の月日が流れ
、落ち着いた雰囲気を醸し出しより魅力的な女性になっていた。
あの時、最後のメールで彼氏が出来たと言っていたが…今はその影は無い。病気のせいで別れたのだろうか…。
如月はそんな事を思い、彼女の全てを知る男がいたんだと思うだけで、胸が苦しくなる重症度合いだ。
彼女の病気を治したいと、渡米しがむしゃらにその知識と技術を学ん出来たのに、3ヶ月たった今でもまだ何も動き出せない自分がいる。
出来ればちゃんと検査して今の状態を知りたいのが本音だが、私情が入り乱れる俺では、上手く彼女に角膜移植を促す自信がない…。
まだ高校生だった彼女に、新薬を押し付けるように勧めるカタチになってしまった罪悪感が、未だに俺を臆病にする。
如月はそんな事を考えながら千紗をずっと見つめていた。
彼女は見えない目のせいで、先程から箸でなかなか豚の角煮が掴めず格闘している。
『食べさせてあげようか?』と思うのだが、彼女の自尊心を傷付ける事になってしまうのではと、如月は先程から葛藤していた。
「貸して。」
如月は見るに見兼ねて、横から角煮を奪い取りひと口台に箸で切り分ける。
確かに、じっくりと煮込まれたであろう脂でコテコテの豚の角煮は、手先が器用だと定評のある如月でさえ掴むのが難しい。
「口開けて。はい、あーん。」
不意に如月が千紗にそう言うから千紗は戸惑い、
「えっ…えっ!?」
と驚きを隠せないでいる。
「いいから、早く。」
千紗は急かされ流され慌てて口を開けてしまう。すると豚の角煮が口の中に放り込まれる。口一杯に広がるジューシーなタレと脂身に、ほろっと溶けてしまう柔らかさ。
「うわぁ、美味しい…。」
ついついその美味しさを千紗は噛み締めて至福の味を堪能しまう。
その様子を見て如月は庇護力を掻き立てられ、次々と口に運ぶ。
口いっぱいになった千紗はもぐもぐと、一生懸命に咀嚼しているその姿も可愛くて、如月にとってはそれだけで癒しになってしまう。
「美味そうだな、俺も頼もうかな。」
如月がそう言って、注文タブレットに手を伸ばそうとすると、千紗の白い腕が伸びて来て如月の手を止める。
「…先生も…食べて、下さい。」
まだ喉を通りきれない豚の角煮でモゴモゴとしてしまう口を押さえながら、注文しようとする如月を止める。
腕に触れた指先がひんやりとして、それでいて柔らかくて…しばらくまじまじとその華奢で白い手を見つめてしまっていた。
「先生…?」
なかなか返事が返ってこない事に不安を感じた千紗が呼びかける。
「…ありがとう、でももう2口くらいしか無いぞ。いいのか?」
「どうぞ…他の物も良ければシェアしませんか?その方がいろいろ食べられますから。」
今日は何となく積極的な千紗だから、このまま言う事を聞こうと、笑いながら如月も賛成する。
フーッと息を吐き如月は隣に座る千紗を覗き込む。
千紗はストラップをなん度も手探りで確かめながら、嬉しそうに微笑んでいた。
彼女がこれほど嬉しそうなのだからこれ以上言う事は無い。
そう如月は思い、今度は俺が何かもっといいストラップを買ってあげなくてはと心に誓った。
久しぶりに2人で居酒屋のカウンターで、肩を並べて夕飯を食べる。
如月は千紗が隣にいるだけで不思議と気持ちが落ち着いて癒された。この1か月の怒涛のような忙しい毎日でさえも、この日の為だったのだのだと思うほどに全てが浄化されていった。
千紗もまた、如月が側にいてくれるだけで安心と安らぎを得ていた。
「千紗は卵料理が好きなのか?」
定食の副菜についていただし巻き卵を、目を輝かせて食べている姿に見惚れてしまう。
もともと綺麗な子だったが、5年の月日が流れ
、落ち着いた雰囲気を醸し出しより魅力的な女性になっていた。
あの時、最後のメールで彼氏が出来たと言っていたが…今はその影は無い。病気のせいで別れたのだろうか…。
如月はそんな事を思い、彼女の全てを知る男がいたんだと思うだけで、胸が苦しくなる重症度合いだ。
彼女の病気を治したいと、渡米しがむしゃらにその知識と技術を学ん出来たのに、3ヶ月たった今でもまだ何も動き出せない自分がいる。
出来ればちゃんと検査して今の状態を知りたいのが本音だが、私情が入り乱れる俺では、上手く彼女に角膜移植を促す自信がない…。
まだ高校生だった彼女に、新薬を押し付けるように勧めるカタチになってしまった罪悪感が、未だに俺を臆病にする。
如月はそんな事を考えながら千紗をずっと見つめていた。
彼女は見えない目のせいで、先程から箸でなかなか豚の角煮が掴めず格闘している。
『食べさせてあげようか?』と思うのだが、彼女の自尊心を傷付ける事になってしまうのではと、如月は先程から葛藤していた。
「貸して。」
如月は見るに見兼ねて、横から角煮を奪い取りひと口台に箸で切り分ける。
確かに、じっくりと煮込まれたであろう脂でコテコテの豚の角煮は、手先が器用だと定評のある如月でさえ掴むのが難しい。
「口開けて。はい、あーん。」
不意に如月が千紗にそう言うから千紗は戸惑い、
「えっ…えっ!?」
と驚きを隠せないでいる。
「いいから、早く。」
千紗は急かされ流され慌てて口を開けてしまう。すると豚の角煮が口の中に放り込まれる。口一杯に広がるジューシーなタレと脂身に、ほろっと溶けてしまう柔らかさ。
「うわぁ、美味しい…。」
ついついその美味しさを千紗は噛み締めて至福の味を堪能しまう。
その様子を見て如月は庇護力を掻き立てられ、次々と口に運ぶ。
口いっぱいになった千紗はもぐもぐと、一生懸命に咀嚼しているその姿も可愛くて、如月にとってはそれだけで癒しになってしまう。
「美味そうだな、俺も頼もうかな。」
如月がそう言って、注文タブレットに手を伸ばそうとすると、千紗の白い腕が伸びて来て如月の手を止める。
「…先生も…食べて、下さい。」
まだ喉を通りきれない豚の角煮でモゴモゴとしてしまう口を押さえながら、注文しようとする如月を止める。
腕に触れた指先がひんやりとして、それでいて柔らかくて…しばらくまじまじとその華奢で白い手を見つめてしまっていた。
「先生…?」
なかなか返事が返ってこない事に不安を感じた千紗が呼びかける。
「…ありがとう、でももう2口くらいしか無いぞ。いいのか?」
「どうぞ…他の物も良ければシェアしませんか?その方がいろいろ食べられますから。」
今日は何となく積極的な千紗だから、このまま言う事を聞こうと、笑いながら如月も賛成する。



