君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

駅側の駐車場で、黒光りするスポーツカーに押し込まれ、訳も分からずいいなりにシートベルトを締める。

「これ、昨日買ったんだけど好きなの選んで食べて。」
無造作に膝にポンと置かれたコンビニの袋を言われるままに覗いてみる。

おにぎりに、サンドウィッチ、菓子パンなどの食べ物がいろいろ入っていて、選ぶのに迷ってしまうほどの量だった。
こんな時なのに私のお腹は正直で、グゥ〜と鳴って顔が真っ赤になる。

「良かったな生きてて。腹が減るのは生きている証拠だ。」
藤堂さんはハハっと笑って、アクセルを踏み車が動き出した。

「…えっと、ありがとうございます。せめてこのお金だけでも…。」

私は恥ずかしさに身の置き場がなくて、おもむろにカバンからお財布を出そうとする。だけど、その手をぎゅっと握られて、

「いらない。年下から金をたかるほど不自由はしてない。それよりも、君は今のこの状況にもっと危機感を持つべきだ。
他人を信じ過ぎるな。悪い奴だったら今頃どうなってたか…。」
ため息混じりに咎められ、その鋭い目で流し見られてドキッとする。

私はムッと顔をしかめて、袋の中からサンドウィッチを一つ出して無言でパクパクと食べ始めた。

それを彼はチラッと見て、またフッと笑う。

「俺にも何かくれ。昨夜から何にも食べてないんだ。」

「えっ!?…すいません。私の事は気にせず食べてくれたら良かったのに…。」
と、小さく呟く。

「…松原千紗。悪いが君の事情は昨夜、君のお母さんからいろいろ聞いた。
泣かれて。相談されてかなり大変だったんだからな。それなのに当の本人は寝るし、挙句にはブルブル震え始めるし、呼びかけても意識は無いしで…さすがの俺もビビリまくった。」
恨み言を並べ立てられて昨夜の一部始終を聞かされる。

彼がお風呂から出てみれば、布団の上でブルブル震えた私が寝ていて、揺れ起こしても全く起きず、なんとか布団の中に入れて額に触ればかなりの高熱で、唇がまたチアノーゼになり慌てて一緒に布団に潜り、一晩中温めてくれていたらしい。

そんな時に電話が何度も鳴るから出てみれば、娘は不治の病で後少しで目が見えなくなると聞かされたらしい…。

怪しまれないように高校の先輩だと話した手前、どうにか話しを合わせながらその場を切り抜け、疑い深い母の信頼すら勝ちとったのだから凄いとしか言いようがない。

当初、母は迎えに行くと言っていたらしいが、土砂降りの中での移動は危ないとなんとか説得してくれたようだ。