君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

「和と洋菓子だったらどっちが良い?それともワインとか酒か?」
車を走らせながら千紗に聞く。

「えっと…父はお酒好き、だけど、甘いものも好き、だと思う。」
無理だと言いながらも、さっきからぎこちなく敬語を取ろうと努力家の千紗は頑張っている。

その度にフッと笑ってしまうのは否めない。
「頑張ってるのにどうして笑うんですか?」
千紗から抗議の声を聞く。

「いや、可愛いいから。一生懸命だなと思って。」
ポンポンと頭を撫ぜれば顔を真っ赤にする。これは…本当に可愛すぎて、俺は今日1日耐え抜けるだろうかと、一抹の不安が頭をよぎる。

そういえば5年前、千紗の母親とは一度会っている。
薄暗い朝方だったから顔を認識出来てはいないと思う。だから俺が藤堂だとは分からないと思うが…
…少なくとも名乗れない以上騙す事になってしまう。その上に今日限定の恋人役だ。

ここに来て罪悪感は半端なく襲いかかる。
これは嘘では無く俺の願望なのだからと自分に言い聞かせる。

結局、立ち寄ったデパ地下では、老舗和菓子屋のきんつばと、有名な地酒を見つけてその2つを手土産に千紗の実家へと向かう。

今は元いた家を売り、都心から少し離れた場所に移り住みマンション暮らしをしているという。
そこは皮肉にも藤堂病院の近くの街だったが、何気無く見て見ぬふりして通り過ぎる。
俺自身も高校を卒業してから一度も実家には帰っていなかった。

母と父の離婚もあり、どんどん実家は遠くなる。藤堂病院は弟が継げばいいとあえて苗字を変えたのは、そういう思惑もあるからだ。