君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

(千紗side)

トーク会は大喝采のうちに終わる。如月先生のお話しは、私の胸にも深く届いた。今まで勝手に思っていた角膜移植のイメージが大きく変わるくらいの衝撃を受けた。

あんなに頑なに拒んでしまった自分が少し後ろめたくなってしまった。

如月先生から、迎えに行くまで動かず待ってて欲しいと言われたから、私は1人動けずにいた。本当に心配しなくても1人でもどこへだって行けるのに…。如月先生は心配し過ぎと思う。

カツカツカツ…とハイヒールの音が通路を歩いて近付いて来る気配がする。通り過ぎるだろうと思っていたヒールの音が近くで止まる。

えっ⁉︎っと思って、誰だろうと首を傾げていると、
「貴女、本当に如月先生のなんなの?」
突き放したような見下した言い方、この声は…如月先生につきまとっているという女性だと直ぐ気付く。

「えっと…同僚としか言いようがないのですが…。」
トゲトゲしい言い方に内心ドギマギしながら答える。

「如月先生は控え室にいるわ。今、先生が出て行ったら会場中がパニックになるから、止めおいたの。」
先程の舞台の後だからそれはそうだろうなと納得する。

「ただの同僚のくせに、いい気にならないでよね。」
ツンっとした強い意志に、私は敵ではありませんと両手を上げて白旗を挙げたい気分になる。
「こっちよ、着いて来て。」
冷たく言われて慌てて立ち上がり、ここに来て始めての白杖も取り出し、ヒールの音を頼りに着いて行く。

「貴女なんて、目が見えないから如月先生は気にかけてるだけなのよ。彼は私といずれ結婚するんだから。いつまでも彼の優しさに甘えてうろちょろ周りをうろつかないでよね。」
キィーキィーとヒステリックに喚きたてられて、 

「重々分かってます。」
と答えるにとどまる。私は出来ればそっとしておいて欲しいのに、構って来るのは如月先生の方だ。そういえないのは争い事を好まないから…ううん私が弱虫で怖がりだからだ。

ガチャンッ!!と重たい扉の音がして、スタッフ専用通路に入った事を知る。

「申し遅れました私、篠原由紀と申します。父は東京医大の教授をしてます。お名刺を差し上げたいけど、貴女見えないからどうしようもないわね。」
どこまでも辛辣で意地悪な人なのだろうと、あえて聞き流そうと努力するしかなかった。