俺の不安なんて関係なく、トーク会が始まりを告げる。
今回のセッションのお題は、『未来を見据えた視覚障害者の生きる道』と称して、心理学的や眼科医的な意見を述べる場となっている。流れや質問内容は事前に聞いているから、それなりに何を誰が何分話すか決まっている。
特に緊張するほどの事は無いと思い、俺も他の医師達に続き、爽やか好青年風の仮面を被り登壇する。
指定の席に付き椅子に座って会場内を見渡せば、数百人…立ち見の観客や通りすがりの人も入れたら、三百人程人が集まっていた。
そして彼女の座る席に目を向ける。そこに彼女の存在を感じホッとすると同時に、下手な事は言えないという、かつてない緊張感に襲われる。
彼女に好印象でなくてはいけない。アメリカにいた時もこういうトークセッションは何度か経験したが、他人に向けて話すため時に言葉が少し辛辣になっても特に気にはしなかった。
意見のぶつかり合いだから、少しの喧嘩ごしは逆に観客にとっては面白いだろうと、若手の立場を利用して、質問をふっかけ名高る教授達に一泡吹かせたいと挑む時もあった。
今日は…出来るだけ優等生でなくてはならない。そつなくこなしスマートに流さなければ…彼女は俺からしたら昔から知る身内同然の存在だ。身内が観ていると緊張する、という事をこれ程までに感じる事は今まで無かった。
とは言え時間を止める事は不可能で、司会者がそれぞれの自己紹介をして一言挨拶程度に話す流れとなる。
「では最後に。昨日の講演会てきっとこの方の魅力にハマった人も多いかと思います。現在28歳という若さでありながら、カルフォルニア医科大病院で5年勤められ、その間に角膜移植の手術を年間500人以上こなして来たという、眼科医会のホープ如月 涼先生です。」
やたらと凄い人かのような紹介を受け、目立ちたくないのに言い過ぎだと思いながら、仕方なしにマイクを取り挨拶をする。
「如月と申します。今しがた凄い人かのように紹介を受けましたが、自身はしがないただの眼科医を目指しております。
今日は名高い名医に囲まれ先程から肩身の狭い思いをしておりますが、生意気な新人だと思ってお手柔らかに接して頂けたら光栄です。」
あらかじめ考えていたシナリオ通り、絶妙な謙遜と若手である事の強味を活かした挨拶をする。
トーク会はテーマに沿って始まり、年配の教授を中心にそれぞれの分野からより詳しく考えを掘り下げていった。
トーク中盤で角膜移植の話しになる。
さすがに専門分野なので、話しを振られて現在の日本における角膜移植の現状を話す。
「毎年国内では1400件以上の角膜移植手術を行なっており、海外ドナー角膜を合わせれば2800件です。それに対し待機患者は2000人程とアイバンク事業部は発表しています。圧倒的な国内ドナー不足は否めません。私自身はカルフォルニア医科大1年間で100件近く施術しましたが…」
現在の角膜移植の現状とドナー不足の問題、技術者不足に、患者やドナーの深層心理などをとり混ぜ話して聞かす。
これは少しだけ彼女に理解を得られればと話したのだが、精神科専門の医師が食いついて来てより深い話になる。
今回のセッションのお題は、『未来を見据えた視覚障害者の生きる道』と称して、心理学的や眼科医的な意見を述べる場となっている。流れや質問内容は事前に聞いているから、それなりに何を誰が何分話すか決まっている。
特に緊張するほどの事は無いと思い、俺も他の医師達に続き、爽やか好青年風の仮面を被り登壇する。
指定の席に付き椅子に座って会場内を見渡せば、数百人…立ち見の観客や通りすがりの人も入れたら、三百人程人が集まっていた。
そして彼女の座る席に目を向ける。そこに彼女の存在を感じホッとすると同時に、下手な事は言えないという、かつてない緊張感に襲われる。
彼女に好印象でなくてはいけない。アメリカにいた時もこういうトークセッションは何度か経験したが、他人に向けて話すため時に言葉が少し辛辣になっても特に気にはしなかった。
意見のぶつかり合いだから、少しの喧嘩ごしは逆に観客にとっては面白いだろうと、若手の立場を利用して、質問をふっかけ名高る教授達に一泡吹かせたいと挑む時もあった。
今日は…出来るだけ優等生でなくてはならない。そつなくこなしスマートに流さなければ…彼女は俺からしたら昔から知る身内同然の存在だ。身内が観ていると緊張する、という事をこれ程までに感じる事は今まで無かった。
とは言え時間を止める事は不可能で、司会者がそれぞれの自己紹介をして一言挨拶程度に話す流れとなる。
「では最後に。昨日の講演会てきっとこの方の魅力にハマった人も多いかと思います。現在28歳という若さでありながら、カルフォルニア医科大病院で5年勤められ、その間に角膜移植の手術を年間500人以上こなして来たという、眼科医会のホープ如月 涼先生です。」
やたらと凄い人かのような紹介を受け、目立ちたくないのに言い過ぎだと思いながら、仕方なしにマイクを取り挨拶をする。
「如月と申します。今しがた凄い人かのように紹介を受けましたが、自身はしがないただの眼科医を目指しております。
今日は名高い名医に囲まれ先程から肩身の狭い思いをしておりますが、生意気な新人だと思ってお手柔らかに接して頂けたら光栄です。」
あらかじめ考えていたシナリオ通り、絶妙な謙遜と若手である事の強味を活かした挨拶をする。
トーク会はテーマに沿って始まり、年配の教授を中心にそれぞれの分野からより詳しく考えを掘り下げていった。
トーク中盤で角膜移植の話しになる。
さすがに専門分野なので、話しを振られて現在の日本における角膜移植の現状を話す。
「毎年国内では1400件以上の角膜移植手術を行なっており、海外ドナー角膜を合わせれば2800件です。それに対し待機患者は2000人程とアイバンク事業部は発表しています。圧倒的な国内ドナー不足は否めません。私自身はカルフォルニア医科大1年間で100件近く施術しましたが…」
現在の角膜移植の現状とドナー不足の問題、技術者不足に、患者やドナーの深層心理などをとり混ぜ話して聞かす。
これは少しだけ彼女に理解を得られればと話したのだが、精神科専門の医師が食いついて来てより深い話になる。



