君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

(涼side)

こんなところでこんな風に言うつもりなんてサラサラなかった…なぜ、俺は…。
頭を抱えて、しまったと息を呑む。

彼女自身が自分を卑下して、障害者だと言った事に過剰反応してしまった。
君は障害者なんかではない、適した治療を受ければまた見えるようになるんだと、それは可能なんだと、つい、言わずにはいられなかった。

今朝、佐久間医師の指示で東京駅に向かい彼女を見つけた時、どんなに安堵し心が踊ったか、会場内を2人で手を繋ぎ歩き回るのが、どんなに楽しかったか…

君は知る由もないだろう…
君を楽しませたいと思うより先に、俺自身が楽しんでしまっていた。ついさっきまで、恋焦がれた恋人に久しぶり会ったような感覚だった。

それを壊してしまったのは、他でもない俺自身だ。

いつかは伝えたいとは思っていたが、今ではなかったはずだ。…自分の失態に動揺し、気持ちが焦りに変わる。

一歩も二歩も彼女が俺から遠ざかってしまったのは間違えないだろう…

たどり着いた洋食屋で向かい合って座るけれど、先程の楽しい雰囲気は泡となって消えてしまい、言葉少なに彼女は節目がちになってしまった。

まるで、少し開いた心がパタンと音を立てて閉じてしまったようだった。

こんな時、気の利いた言葉一つも思いつけない自分を恨む。

彼女は予想通りオムライスを、俺はハンバーグを注文したが食欲はとうに失せてしまい、彼女の反応ばかりが気にかかる。

「松原さんはオムライスが好きなの?」
たわいもない会話で気を紛らわそうと試みる。

「自分では、なかなか作れないので…。」
先程よりはかなりテンションが落ちているのは目に分かる。

遠回りな話しをしたって埒があかない。ここは正直に謝ってしまった方が、いくらかマシかもしれない。

それでもダメなら、俺が藤堂である事を伝えるべきか…?
いや、それは、きっとダメだろう…騙されたと思われたら、もっと信頼を無くすかもしれない…。

頭の中であれやこれやと葛藤し、彼女の心をなんとかして取り戻したいと頭をフル回転させる。