君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

いろいろと問いただしたいのに、サッサと歩く如月先生に必死に着いて行く事しか出来ず、
丁度、待機していたタクシーに乗せられ、洋食屋さんに足を運ぶ。

「き、如月先生…さっきのは、どういう事、ですか!?」
タクシーが動き出しひと息ついて、やっと声をかける事が出来た。

「…ごめん、咄嗟に君を巻き込んでしまった。
仕方なかったんだ。昨夜から付き纏われてて…仕舞いには彼女の父から交際を打診されて困っていたんだ。」
やっと手を離してくれた如月先生が、そう謝ってくる。

「びっくりしました…冗談にも程があります。先程の方と先生の事情は分かりましたが…私はただの仕事仲間です。」
抗議の気持ちを示す為にグッと強気な態度をとる。

本心ではそこまで怒りの気持ちは湧き出てこない。異性からこんなにモテる如月先生の、一瞬でも特別になれたなら名誉とまで思うほどだから…。

「ごめん…嫌な思いをさせて申し訳なかった。つい楽しい時間を過ごして距離感を見失ってしまっていたんだ。許して欲しい。
…昼食は奢るからデザートだってなんだって好きなだけ食べて。」

さっきまであの女性に対しては、あんなに塩対応で冷たい態度を取っていた人が、私には乞うように必死になって謝罪してくるのから、なんだか可笑しくなってしまう。

だから、ついフフッと笑ってしまうと、
「…なぜ笑う?」
不服そうに不貞腐れる如月先生はなんだか可愛い。

「ふふっ…ごめんなさい。つい、さっきの女性の態度とは全く真逆なので、可笑しくなってしまって…すいません。」
次に謝るのは私の方だった。

「ハハッ…確かにそうだな。普段から近付いてくる女性には勘違いされたくなくて、冷たくあしらってるけど、君とは本音で接したいんだ。」

それは…
ある意味で恋愛対象外だからでは?
私の中で納得する。

「私が障害者だからですよねきっと…。」
立場をわきまえなければと、つい自虐してそう本音を漏らしてしまう。

この人がこんなにも私の事を気にかけてくれるのは、障害者である私を心のどこかで哀れんでいるからだと。出会ってからずっと心のどこかで引っかかっていた。

と、いうより私の中で線を引いていた。
彼の親切は同情なのだと、勘違いしないようにしないといけないと…

「俺は君を一度だって可哀想だと思った事はないよ。実は君のカルテを見せてもらった事がある。君が視力を取り戻すのは可能だと思う。君が望めば、俺が治してあげられる。」
少しの沈黙のあと、如月先生が静かにそう告げた。
タクシーの中、私は思ってもない言葉に返事も出来ず、戸惑い明るい車窓に目を向けて何て返事をしようかと思案した。