君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

本来なら誘導は肩に掴まるのが良いとされているから、家族でも恋人でもない人と手を繋ぐのはある意味恥ずかしい。
眼科医の先生だからそんな事は言われなくても分かっている筈なのに、如月先生はいつだって私の手を握る。
先生は…なんとも思わないのかな…?

あの頃…高校生の時涼さんもよく手を繋いでくれたけど…淡い恋心もあったから、繋ぐたびにドキドキした…
如月先生といるとなぜかあの頃の懐かしい記憶が蘇ってくる。

遠い記憶に思いを馳せてしまったせいか、ボーっとしていたようで、
「…松原さん、大丈夫?気分でも悪い?」
如月先生に何度か呼びかけられていたようで、心配されてハッとする。

「あっ…ごめんなさい。大丈夫です。ちょっとボーっとしちゃって…。」
慌てて謝り、周りの様子を手探りで探ってみる。
「左手に最新の料理器具が展示されいて、販売もしている。」
如月先生が見えない私のために、ブースの内容を事細かに教えてくれた。

「こんにちは。良かったら手に取ってみて下さい。」
さっそくブース担当の男性スタッフがやって来て、商品を私に持たせてどのように使うかレクチャーしてくれる。

私に手渡されたのは、醤油を適量に測ってくれるプラスチックの計量容器で、傾けたまま蓋の上を押すと小さじ一杯分だけ出す事が出きるらしい。しかも、倒れても中身がこぼれないという優れ物だった。

「凄い便利ですね。これは知らなかったです。」
知覚障害者となってまだ日が浅い私だから、触るもの全てが新鮮で、新たな発見ばかりだからテンションが上がってしまう。

如月先生も興味津々のようで、スタッフに質問攻めをして少し困らせてしまうほどだった。
思う存分ブース内を見学した後、私はいくつかの便利アイテムを購入する事が出来た。

「あのスタッフ…君にベタベタ触りすぎじゃないか?」
ホクホク顔の私にこっそりそう言ってくる。なぜか如月先生は浮かない感じだ。

「そうですか?とても親切で、説明も分かりやすくて良かったですけど…?」
そう言う私に如月先生は、「はぁー…」とわざとらしくため息を吐く。

「君はもっと警戒心を持つべきだ。いつか知らぬ間に大きな壺とか売りつけられるぞ。」
そんなよく分からない忠告をされて、ふふふっとつい笑ってしまう。
「さすがに壺は要りませんから大丈夫です。」
そう返事をして次のブースへと足を運んだ。