君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

「千紗…!!」
えっ⁉︎誰かが私の名前を呼んだ気がして声がした方に振り返る。少しの間の後、バタバタと足音を聞き大きな影に守られる。

「すいません…俺の連れです。荷物、大丈夫ですので、ありがとうございます。」
聞き覚えのある声を聞き、ドクンと否応にも心臓が高鳴る。

えっ…どうして⁈どうしてこの人がここにいるの⁉︎頭はパニック状態で、2人の男性のやり取りが遠くに感じてしまうくらいだ。

「大丈夫だったか⁉︎荷物これだけ?他には?取られた物とか無いか?」
矢継ぎ早に話しかけられて戸惑ってしまう。

「ああ…ごめん。…如月です。佐久間医師に頼まれて迎えに来たんだけど。まさか、松原さんとは思わなくて…すれ違いにならなくて良かった。」
ああ、本当に如月先生だ。良かった…素直に心から嬉しくなる。それなのに…

「大丈夫か…⁉︎君だと知ってたら、到着前にここまで来たのに、ごめん……。」
安心したせいか心とは裏腹に目から涙が溢れてしまう。慌てたのは如月先生で、全く悪く無いのに謝らせてしまった。

「ごめんなさい。ちょっと…ホッとしちゃって。…泣くつもりなんてなかったんでけど…」
手で無理矢理涙を拭う。彼の前で泣いてしまうのはこれで2度目だ…。

「大丈夫…少し座って落ち着こう。」
近くのベンチまでそっと手を握って誘導してくれた。
少し時間をもらってやっと涙を止める事が出来た。その間も如月先生は何も言わずにただ、私を隠すように目の前に立ち手をぎゅっと握り続けてくれた。

「すいませんでした…もう、大丈夫です。
…ところでなぜ、如月先生が東京に?」
気持ちが落ち着いたところで、やっと1番聞きたかった事を聞く事が出来た。

「佐久間医師のピンチヒッターで昨日講演をさせてもらって、今日は来賓として呼ばれているんだ。君も佐久間医師に頼まれて?」

「はい…シンポジウムに参加してレポートを提出して欲しいと言われています。今日は仕事として来てるのに…すいません。ご迷惑をお掛けしてしまって。」

「俺に謝らなくていい。歩けそうならとりあえずここを離れよう。」
そう言って、如月先生が荷物を全部持ってくれた。それまでの不安な気持ちは一気に晴れて、無事に改札口を抜ける事が出来た。