週末の日曜日。
小さなトランクに2日分の衣服を詰めて東京へと独り旅立つ。
こちらに就職してから一度も東京には帰っていなかった。両親は以前住んでた家を引越し、今は悠々自適なマンション生活を楽しんでいる。
親とは1週間に一度メールや電話のやり取りをする程度で、今は密になり過ぎないようにあえて淡白な関係を保っている。
それというのも、私の目が見えなくなって行く程に、母がやたらと過干渉になり、このまま一緒にいたらどちらかが病んでしまうのではないか、と思うぐらいに心配症が度を超えていった。
お互いが離れた事で、母も趣味友達を見つけ、今はあの頃よりも楽しく充実した毎日を送っていると聞いている。
朝6時前の始発に乗って、東京に着くのは約2時間後。キヨスクでサンドイッチと飲み物を買って新幹線に乗り込む。
着いたら改札口に迎えをやるからそこで待っていて欲しいと言われたけれど…
その人の名前も連絡先も聞いていない。
広い東京駅で本当にちゃんと会えるのだろうか…少しの不安を抱えながら、2時間の旅路を楽しんだ。
『きっと相手が君を見つける筈だから大丈夫。』
佐久間先生はそう言っていたけれど、私を知ってる人なのだろうか…。
新幹線を降りて、人で溢れるプラットホームを白杖片手に、小さなトランクを持ちながら慎重に歩く。ここに来てリュックにすれば良かったと反省する。
見えない世界は音に敏感で、少しのざわめきで外国人観光客がこちらに向かって来るのを察知する。
ここはしばらく動かず通り過ぎるのを待った方が良さそうだと判断し、自販機らしき場所に避けて、人の波が引くのを少し待つ。
プラットホームから改札口まではエスカレーターや階段を降りなければ辿り着けず、視覚障害者はそういう場所で、少しでも人にぶつかれば弾かれて命取りになりかねない。
どうしよう…と、一瞬立ち尽くす。
逆流してエレベーター乗り場を探すか、人が減るのを少し待つか…どっちが安全かなと考える。
「お困りですか?良かったらトランクお持ちしますよ。」
不意に男性が声をかけてくる。
親切心で声をかけて来たのか、もしくはトランクを奪おうと狙っているのか…声だけの判断では分からない。
「あの、大丈夫です。ありがとうございます。」
丁寧に頭を下げて断わるのだけれど、
「他の人の邪魔になるから、お手伝いします遠慮しないで下さい。」
男性は思いがけず食い下がって来る。
お願いするには危険な気がする。
どうしよう…トランクの持ち手をグッと握り締める。どこかに駅員さんはいないだろうか…
ドクンドクンと心拍数が上がり始めるし、額から汗がツーと流れ出る。
小さなトランクに2日分の衣服を詰めて東京へと独り旅立つ。
こちらに就職してから一度も東京には帰っていなかった。両親は以前住んでた家を引越し、今は悠々自適なマンション生活を楽しんでいる。
親とは1週間に一度メールや電話のやり取りをする程度で、今は密になり過ぎないようにあえて淡白な関係を保っている。
それというのも、私の目が見えなくなって行く程に、母がやたらと過干渉になり、このまま一緒にいたらどちらかが病んでしまうのではないか、と思うぐらいに心配症が度を超えていった。
お互いが離れた事で、母も趣味友達を見つけ、今はあの頃よりも楽しく充実した毎日を送っていると聞いている。
朝6時前の始発に乗って、東京に着くのは約2時間後。キヨスクでサンドイッチと飲み物を買って新幹線に乗り込む。
着いたら改札口に迎えをやるからそこで待っていて欲しいと言われたけれど…
その人の名前も連絡先も聞いていない。
広い東京駅で本当にちゃんと会えるのだろうか…少しの不安を抱えながら、2時間の旅路を楽しんだ。
『きっと相手が君を見つける筈だから大丈夫。』
佐久間先生はそう言っていたけれど、私を知ってる人なのだろうか…。
新幹線を降りて、人で溢れるプラットホームを白杖片手に、小さなトランクを持ちながら慎重に歩く。ここに来てリュックにすれば良かったと反省する。
見えない世界は音に敏感で、少しのざわめきで外国人観光客がこちらに向かって来るのを察知する。
ここはしばらく動かず通り過ぎるのを待った方が良さそうだと判断し、自販機らしき場所に避けて、人の波が引くのを少し待つ。
プラットホームから改札口まではエスカレーターや階段を降りなければ辿り着けず、視覚障害者はそういう場所で、少しでも人にぶつかれば弾かれて命取りになりかねない。
どうしよう…と、一瞬立ち尽くす。
逆流してエレベーター乗り場を探すか、人が減るのを少し待つか…どっちが安全かなと考える。
「お困りですか?良かったらトランクお持ちしますよ。」
不意に男性が声をかけてくる。
親切心で声をかけて来たのか、もしくはトランクを奪おうと狙っているのか…声だけの判断では分からない。
「あの、大丈夫です。ありがとうございます。」
丁寧に頭を下げて断わるのだけれど、
「他の人の邪魔になるから、お手伝いします遠慮しないで下さい。」
男性は思いがけず食い下がって来る。
お願いするには危険な気がする。
どうしよう…トランクの持ち手をグッと握り締める。どこかに駅員さんはいないだろうか…
ドクンドクンと心拍数が上がり始めるし、額から汗がツーと流れ出る。



