君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

残業終わりに中庭に立ち寄る。自然と足が運ぶのは、彼女と束の間過ごしたあの東家だ。

今日は満月、既に月は真上に上り建物に囲まれた中庭も、月の光に明るく照らされていた。

あのメロンパン美味かったな…
見上げた月の丸さがメロンパンに見えてしまうくらい、どうやら俺は飢えているようだ。

独り苦笑いしながらしばらくその場で動けずにいた。

ふと目を下すと、座ったベンチの隙間にハンカチのような布地が挟まっているのに気付く。
あれ?っと思いそっと拾って月明かりで透かして見ると、どこかで見覚えのあるハンカチだった。

この薄紫色のガーゼハンカチ…もしかしたら千紗の物ではないだろうか?
メロンパンを一緒に食べた時に使っていたのとよく似ている。綺麗な色のハンカチだなと思ったから間違えない。
きっと、風に吹かれて飛んでしまったのだろうか…?

見えない彼女が落ちた物を探す事は不可能に近い。彼女に渡してあげなければと、大切に胸ポケットにしまって立ち上がる。

不思議なものでそれだけで胸の中が温かくなる。
次会えるのはいつになるだろうか…