君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

「えっ…!?いえ…1人でタクシー待ってるなら乗せて行ってあげようかと…。」
男共はオロオロと言い訳をして、凄んで睨みつける俺にビビリつつバタバタとせわしなく去って行った。

しかし…なぜ彼女はいつも変な輩に絡まれやすいのか…。ハァーとため息混じりに振り返る。

「席で待っててくれたら良かったのに…。
大丈夫か?嫌な事されなかった?」
苛立ちを隠せずつい不満をぶつけるようないい方をしてしまう。

「…大丈夫です。ごめんなさい…かえってご迷惑をおかけしてしまい…」
オロオロとしてしまう彼女に、しまった…と我に還る。
「いや…ごめん1人にさせて。酔っ払いなんかより先に君を車に乗せるべきだったな。」
声のトーンを落として、慌てて彼女を気遣う。ブンブンと首を振る彼女に少しの罪悪感が胸を燻る。

変な輩が近付いて来るのは致し方無い…彼女はどこに居ても目を惹く可憐さだ。それに可愛さも兼ね備えている。

もう少し警戒心があればいいのだが、何でも受け入れてしまいそうな純心さが、浅はかな男共を隙あらばと近付かせてしまうんだ。

反省しつつ、彼女に手を貸して階段を降りる。願わくばこの手に触れられるのは俺だけであって欲しい。と、つい思ってしまう。

彼女を助手席に乗せ、海岸沿いの道をひた走る。このまま夜のドライブを2人で楽しめたらなと思うが、後部座席からは酔っ払いの佐久間医師の寝息…。

先ほどからグーグーと気持ちよさそうにいびきまでかいている。この人は脳天気でいいな…と、バックミラー越しに見やってフッと笑う。
「すいません…明日、出頭の手術があるんですよね?それなのにお手を煩わせてしまい、申し訳ないです。」
彼女が恐縮して何度も俺に謝ってくる。

「いや、気にしなくていい。大抵、佐久間医師と飲む時は最後こうなるんだ。彼は彼で日頃のストレスが溜まってるからきっと。」
いつもの事だと伝えると、やっといくらか肩の荷が降りたようだ。

赤信号で車を止めて彼女の横顔を盗み見る。白く滑らかな肌は、夜の暗闇の中でさえ発光しているかのように綺麗だった。
今や役に立たなくなってしまった瞳だって、テールランプの光を浴びて綺麗に輝きを増している。
なぜ俺のいない間に、こんなも綺麗になってしまったんだと切なく想う。

愛しくて恋しい気持ちが溢れ出しそうで、無意識に触れそうになる己の手を何とか理性で制御する。

いつの間にか変わってしまった信号機に、後方の車がクラクションを鳴らす。ハッと我に返り車を走らせる。

「佐久間先生のご自宅は病院のお近くでしたよね?今から送り届けるとなると…大変ですよね…。」
彼女が俺なんかの事をどこまでも心配してくれる。
「大丈夫。そんな時の為に病院近くにも部屋を借りているんだ。」
そう言って笑ってみせる。