君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

「なんか拗れてるなー。
もう堂々と名乗り出て、思いの丈をぶつけちゃえばいいんじゃないか。」

結局来たのは海沿いのイタリアン。
男2人で個室も無いと、店の片隅の人気の少ないテーブル席で、先程からちょびちょびと赤ワイン片手に佐久間医師が意図も簡単に毒を吐く。

「そんな事したら引かれますよ。どうにかして新たに築き上げた俺への信頼も簡単に地に落ちてしまいます。」

「またぁー。顔に似合わず消極的な発言だねー。涼君はさぁ、もうちょい自分にわがままになるべきだ。」
俺の心にいち早く気付き、唯一腹を割って話せる相手だ。

「見た目と心は別物ですから。所詮しがない男です。このままいけばストカーだと思わねかね無い。」

「千紗ちゃんだって5年前は確かに君に恋してだはずだよ。こんないい男が片思い拗らせて腐ってくのは見てられない。」
佐久間医師は下手な役者のように頭を抱えてみせる。

「貴方はただの傍観者だから簡単に言えるんですよ。俺としたら一言一句の全てが命取りなんです。面白がって適当な事言わないで下さいね。」
不貞腐れた子供のように愚痴を吐く。

彼女に角膜移植を受けさせたい。それが俺の5年間の全てだったから。だからこそ、いざとなったら上手く話せない…
その事さえもいらないお節介では無いかと迷いが生じる始末だ。

「僕はただキューピットになりたいだけだよ。昔から2人はお似合いだと思ってるからね。」
赤ワインを一杯飲み干して、佐久間医師は楽しそうに酔っていく。

俺は目の前のピザに手を伸ばし、ノンアルコールの味気ないビールを乾いた身体に無理矢理流し込んだ。

ブブ ブブ……
珍しく佐久間医師のスマホが机の上で震える。
「おっ!来た来た。こっちこっち。」
スマホを片手に佐久間医師が誰かに向けて手を振っている。

「ああ、見えないんだったっけ。ちょっと迎えに行って来るから待ってて。」
ガタゴトと椅子から立ち上がり、佐久間医師はそのまま入り口へ消えて行った。

何勝手に人を呼びつけてるんだ?
今日はとことん俺の愚痴を聞いて貰いたかったのに…。俺はというと多少の苛立ちも隠せず、佐久間医師が消えていった入り口を睨んでいた。