自覚はしている…
俺はずっとあの頃から彼女の事が変わらず好きだ。この気持ちを『好き』という言葉で表すには、もはや軽過ぎるかもしれないくらいだ。
帰国して直ぐ彼女を探したのは、この5年間の目的を果たしたいと思ったからだ。
医者と患者として再会し、再び彼女が視力を取り戻してくれたら満足するはずだった。
俺は一度振られている。
いつまでも女々しく引きずる気持ちを断ち切るためにも、そうでなければいけないと思った。
既に結婚しているかとも思っていた。
だけど、彼女は1人で一生懸命に生きていた。
そんな姿を目の当たりにして、何か俺でも役にたてないかと勝手に気持ちが動いてしまう。
5年前、独りでに膨らんでしまったこの気持ちに蓋をして、無理矢理彼女から離れたのは自分自身だ。
これ以上側に居続けたら自分を制御出来なくなると恐れを抱いた。
まだ未成年だった彼女に決して手は出してはいけないと、純真無垢なその心を穢すわけにはいかないと思い、程のいい留学話しを受け入れて、自分自身を偽り無理矢理思考から彼女を追い出した。
留学中は一心不乱に働いて心から彼女を追い出したかったのに、結局何も変わらないまま…
遠く離れてもなお薄れるどころか、彼女との思い出はより美化されて鮮明に蘇ってきた。
あの時逃げたツケが今、回って来た。
側に居ればどうしようもなく無意識に触れてしまいたくなるし、医者と患者として向き合いたいのに、距離感を上手く保てない。
いっそう当たって砕けてしまえば目が覚めるのか…
こじれに拗れたこの一方通行の片思いに終止符を打たなければ、捕らえられた俺の心はどこにも行けず燻るばかりだ。
彼女を医局に送り出した帰り道、無性に振り返りたくなる衝動と人知れず戦う。
誘導のためだと触れた手が、肩が熱を帯びる。
夕方、明日の手術患者のミーティングを終え、久しぶりに佐久間医師と会話をする。
「藤…あっ違った。如月先生、今夜一杯どう?久しぶりに美味い酒でも飲んで話し明かそうか。」
わざとらしく名前を間違えて、佐久間医師が俺に笑いながら近付いて来る。
「お疲れ様です…。明日午前出頭なんで酒はちょっと…。」
知ってるくせにと思いながら、胡散臭そうに目線を投げる。
「そうだ、そうだった。残念だなぁー、噂のメロンパンの差し入れのお礼がしたかったのになぁ。」
またまたわざとらしく俺を煽って楽しんでいる。
「…夕飯ぐらいなら付き合えますよ。」
不服だが、今の俺のモヤモヤの吐き出し口になってもらおうと、その煽りにかって出る。
「おっ。嬉しいねー。珍しくこの年寄りを相手にしてくれるとは。積もる話もあるし、料亭の個室でも予約するか?それとも海岸沿いのイタリアンレストランもいいな。」
どこまでも面白そうに佐久間医師は揶揄いの手を止めない。
「足ないんで、送迎してもらえますか?」
俺も負けずに太々しさを醸し出して、医局長である上司の佐久間医師を足代わりに使う事にする。
一つだけ頭をよぎるのは彼女の事…
今朝怖い思いをしたばかりの電車で、1人無事に帰れたのだろうか…?
腕時計を見れば6時半を回っていた。
既に遅いか…無事に家に着いていればよいがで…。窓の外に目をやりため息を一つ吐く。
俺はずっとあの頃から彼女の事が変わらず好きだ。この気持ちを『好き』という言葉で表すには、もはや軽過ぎるかもしれないくらいだ。
帰国して直ぐ彼女を探したのは、この5年間の目的を果たしたいと思ったからだ。
医者と患者として再会し、再び彼女が視力を取り戻してくれたら満足するはずだった。
俺は一度振られている。
いつまでも女々しく引きずる気持ちを断ち切るためにも、そうでなければいけないと思った。
既に結婚しているかとも思っていた。
だけど、彼女は1人で一生懸命に生きていた。
そんな姿を目の当たりにして、何か俺でも役にたてないかと勝手に気持ちが動いてしまう。
5年前、独りでに膨らんでしまったこの気持ちに蓋をして、無理矢理彼女から離れたのは自分自身だ。
これ以上側に居続けたら自分を制御出来なくなると恐れを抱いた。
まだ未成年だった彼女に決して手は出してはいけないと、純真無垢なその心を穢すわけにはいかないと思い、程のいい留学話しを受け入れて、自分自身を偽り無理矢理思考から彼女を追い出した。
留学中は一心不乱に働いて心から彼女を追い出したかったのに、結局何も変わらないまま…
遠く離れてもなお薄れるどころか、彼女との思い出はより美化されて鮮明に蘇ってきた。
あの時逃げたツケが今、回って来た。
側に居ればどうしようもなく無意識に触れてしまいたくなるし、医者と患者として向き合いたいのに、距離感を上手く保てない。
いっそう当たって砕けてしまえば目が覚めるのか…
こじれに拗れたこの一方通行の片思いに終止符を打たなければ、捕らえられた俺の心はどこにも行けず燻るばかりだ。
彼女を医局に送り出した帰り道、無性に振り返りたくなる衝動と人知れず戦う。
誘導のためだと触れた手が、肩が熱を帯びる。
夕方、明日の手術患者のミーティングを終え、久しぶりに佐久間医師と会話をする。
「藤…あっ違った。如月先生、今夜一杯どう?久しぶりに美味い酒でも飲んで話し明かそうか。」
わざとらしく名前を間違えて、佐久間医師が俺に笑いながら近付いて来る。
「お疲れ様です…。明日午前出頭なんで酒はちょっと…。」
知ってるくせにと思いながら、胡散臭そうに目線を投げる。
「そうだ、そうだった。残念だなぁー、噂のメロンパンの差し入れのお礼がしたかったのになぁ。」
またまたわざとらしく俺を煽って楽しんでいる。
「…夕飯ぐらいなら付き合えますよ。」
不服だが、今の俺のモヤモヤの吐き出し口になってもらおうと、その煽りにかって出る。
「おっ。嬉しいねー。珍しくこの年寄りを相手にしてくれるとは。積もる話もあるし、料亭の個室でも予約するか?それとも海岸沿いのイタリアンレストランもいいな。」
どこまでも面白そうに佐久間医師は揶揄いの手を止めない。
「足ないんで、送迎してもらえますか?」
俺も負けずに太々しさを醸し出して、医局長である上司の佐久間医師を足代わりに使う事にする。
一つだけ頭をよぎるのは彼女の事…
今朝怖い思いをしたばかりの電車で、1人無事に帰れたのだろうか…?
腕時計を見れば6時半を回っていた。
既に遅いか…無事に家に着いていればよいがで…。窓の外に目をやりため息を一つ吐く。



