君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜


真夏の昼下がり、太陽はサンサンと照り輝きセミの鳴き声すら聞こえない程の暑さだ。

その中庭の真ん中に小さな東家があった。
そこは緑のカーテンで日陰が作られていて、ミストのカーテンで囲まれた、まるで砂漠の中のオアシスのような存在だった。

「段差に気をつけて、2段階段がある。ここまでくれば涼しいから。」
そう言ってビクビク歩く彼女の気持ちにそっと寄り添う。

見えない世界というものはどんなにか恐怖で、一歩踏み出す事がどれだけ勇気が入る事なのか、分からないながらも出来る限りの神経を使って誘導する。

「ひゃっ…!」
突然彼女が小さく悲鳴を上げる。

「ああ!…ごめん。ミストで覆われた場所なんだ。説明不足だった…。」
転ばないようにと足元ばかり気になって、うっかりミストが出ている事を教えていなかった事に気付く。

東家の長椅子に座らせながらどういう場所なのか言葉で説明する。

「…真夏なのに涼しいですね。」
理解してホッとしたのか、両手を前にかざしてミストで濡れるのを楽しんでいるかのように微笑む。

良かった…。
半ば強引に連れて来てしまったところがあるから、咎められるかもしれないと内心気掛かりだった。

「ここは、担当の入院患者に教えてもらった隠れ家なんだ。こんなに暑い日だから近付く人も少ないと思う。」
他に人がいない事を彼女に告げて、うーんと腕を伸ばして背伸びをして見せる。