君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

電車がゆっくりと駅に到着して、サッと席から立ち上がり白杖をカバンから出そうとすると、すかさず隣にいた如月先生が、

「俺でもまだ、白杖代わりにはなれると思う。」
と言って、私の手を取り歩き出す。

あんな…突き放すような事を言ってしまったのに…もう、きっと一線ひかれたのだと勝手に落ち込んでいたから、そんな何気ない優しさに心がジンと温まる。

「あ、ありがとうございます…。」
と、呆気に取られたままお礼の言葉を呟くしかなかった。

「悪いけど、君に関してはこれからも、良かれと思う事は勝手にさせてもらうよ。嫌ならはっきり言ってくれたらいい。
要らぬお節介でも、自己満足に過ぎなくても、それで俺は一向に構わない。」
そう振り切ったように宣言して、如月先生は私の手をぎゅっと握り締め歩く。

これでは…介助というより恋人同士だと勘違いされてしまうかもしれない。

もう病院の近くなのだから、先生を見知った患者様だっているかもしれないし、病院で働く人だったら、たちまち噂になってしまうかもしれない…。

「せ、先生。誰かに見られたらいけませんから。ここら辺で…」
私は1人焦って手を引っ張るのに、思いがけない強さで握られて、全くビクともしなかった。

「何を恥ずかしがる事が…?」
如月先生は爽やかに笑ってそう言い放ち、病院の従業員玄関まで決して離してはくれなかった。

おかげで私は嫌な汗を掻きながら、終始俯いて歩くしかなかった。