君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

「大丈夫?」
大きな影が近付いて来る気配を感じる。

「助けて頂き、ありがとうございました。」
私はすかさず頭を下げてお礼を言う。
緊張が解けたせいで握りしめていた両手がブルブルと小刻みに震えてしまう。

「ああ、いや…俺、如月です。今まで海に入ってたんですが、君が絡まれてるのを見かけて…大丈夫⁉︎」

如月先生だと知った途端、安心したのかなんなのか…自分でも分からないけれど、知らぬうちに涙がポロポロと流れ落ちていた。
慌てた私は取り繕うように笑って、手で涙を拭い捨てる。

「ご、ごめんなさい。泣くつもりなんて無くて…なんでだろすいません…。」
早く止めなきゃと思うのに、涙が気持ちとは裏腹に拭いても拭いても止まってはくれず、後から後から流れ出す。

すると突然引き寄せられて、気付けば如月先生の腕の中で…
しかも…先生…半裸⁉︎

温かな温もりと硬くて厚い胸板に戸惑い心がバタバタとしてしまう。急いで離れようとするのに、抱きしめる腕の力が思いがけず強くて逃れられない。

「泣きたい時は泣けばいいよ。
だけど…ごめん。
俺今、海水のせいでベタベタしてて申し訳ないんたけど…君の泣き顔、誰にも見られたくないんだ。」
どこかで聞いたような事を独り言の様に呟き、なかなか離してはくれなかった。

如月先生の重低音で穏やかな声は、私にとっては特効薬で震えていた身体も、気持ちも落ち着かせてくれた。

「先生…すいません。
ご迷惑をお掛けしました…もう、大丈夫です。」
しばらくひとしきり泣いた後、そう言って距離を取る。

「いや別に気にしなくていい。それより少しは気持ち楽になった?」

「はい…あの、ごめんなさい…先生の貴重なお休みが私のせいで…。」

気付けば辺りが薄暗く夕焼け色に染まっているのを感じて、申し訳なさで心が痛む。

「そんな事ないよ。君がピンチの時にたまたま近くにいて、助ける事が出来て良かった。暗くなって来たから家まで車で送るよ。」
如月先生は惜しみなく、私のお世話をかって出る。

「いえ、大丈夫です。歩いて直ぐなので、本当にありがとうございました。」
私はといえば、これ以上は迷惑かけられないと、慌てて離れようとする。
なのに…肩にかけていたパソコンが入ったカバンをスッと奪われてしまう。