君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

もしも千紗が治験に参加しなくても、目が見えているうちに、今日みたいに彼女が行きたい場所に連れて行き、見たいものを見せてあげたい。彼女が感動するものを同じ目線で感動を分かち合いたいと思った。

俺は今まで視力維持と、願わくば治す事ができたらと思う一心で、最先端の治療ばかりを探していたが、それよりももっと大切な事に気付けた。

帰りの車は心無しか寂しさが漂う。
カーオーディオから流れるBGMだけが2人の間を優しく包む。お互い話さなくても気にならず、それどころか不思議と心地良く、誰といるよりも心穏やかで、安らぎすらも感じていた。

「あの…今日は1日お付き合いして頂きありがとうごさいました。」
心地の良い沈黙を破ったのは彼女の方で、ついに今日1日の終わりを告げられたかのような虚しさが俺に降り注ぐ。

「こちらこそ。楽しかった、ありがとう。」
紡ぐ言葉も見つからず、ありきたりな返事しか出来ない。

「治験の事、1人でもう一度良く考えてみたいと思います。」

「この治療が君にとって合うのか、合わないのかは今の段階では正直誰も分からない。副反応だって未知な新薬だから、よく考えて答えを出して欲しい。」
俺の自己満足なお節介に、彼女は精一杯の思いを込めて、コクンと頷いてくれた。