君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

近くにサーフショップがあったはずだ。まだやっているだろうか…?

太陽はいつの間にか沈んでいて、空を見上げれば星がチラチラと輝き始める。暗くなり段々見えなくなって行く景色に、少しの心細さを感じながら、それでもこの場を離れる訳にはいかないと、千紗はギュッと両手を握り藤堂の帰りを待ち続けた。

「ねぇ、彼女!1人で何してるの?」
不意に誰かに話しかけられて、千紗はドキッとして振り返る。辺りは薄暗く、既に千紗にはシルエットしか分からない。

2人…3人だろうか…。
目を凝らして一生懸命に様子を探る。

「こんな所で何してるの?寒くなって来たし暇なら俺らとお茶しない?」
軽い感じで話しかけられ、しかもそのうちの1人が隣りに座って来る気配を感じ、千紗は身体硬らせる。

「…人を待ってますから。」
精一杯に威嚇をする千紗に、動じる事もなく男達はしつこく話しかけてくる。

「誰もいないよ?もう、忘れられちゃったんじゃない?そんな奴ほっといて俺らと遊ぼ。」
スッと手を取られ、ブワッと鳥肌が立ち慌てて立ち上がり手を振り払う。

「…構わないで。」
どうしよう…少しパニックになって手が震え出す。とりあえず、この場を離れた方がいい。
千紗はそう判断して立ち上がり、藤堂がかけてくれたジャケットだけを抱きしめて、足元の見えないまま唯一明かりが灯された場所を目指して歩き出す。

それなのに男達はしつこく跡をついてくる。

「ちょっと待ってよー。せっかくだから、何か食べに行こうか?奢るから。」
こういう時、どうしていいのか分からない。
また泣きそうになった所に、サッと目の前が暗くなりバッと誰かに抱きしめられる。

「彼女に何の用?」
いつもより低い声を聞きビクッとするけど、千紗は藤堂だと認識してホッと息を吐く。

「あっ…えっと、彼女1人で寂しそうだったので…。」
男達はたちまちだじろきを見せて足を止める。

「ふざけんなっ。失せろ。」
普段の藤堂らしからぬ言葉を聞いて、千紗の心臓はドクンと高鳴り始める。
男達も怖気付いたのか口々に、
「すいませんでした…!」
と、頭を下げてその場を走り去って行った。

「…ったく。」
チッと舌打ちまでして、片手で千紗を抱きしめたまま、しばらく藤堂は走り去る男達を睨み付けていた。

「ご、ごめんなさい…ご迷惑を…おかけして…。」
千紗は心臓を高鳴らせたまま、自分のせいでまた迷惑をかけてしまったと反省しきりで、藤堂からの離れなければと、両手で藤堂の胸を押す。

それなのに、藤堂の腕は強くなる一方で戸惑ってしまう。
「…と、藤堂…さん?」

「ああ、ごめん。つい…。」
藤堂は今、我に返ったかのようにパッと離して千紗と距離をとる。

「何も、されなかったか?」
千紗を心配して顔を覗き込んでくる。それすらもシルエットでしか見えなくて、ついに涙が溢れ出してしまう。

「ごめん、俺が離れたせいで怖い思いをさせた。悪かった…。」
今度はそう謝られ、慌てたように咄嗟に千紗の涙を指で拭う。

「だ、大丈夫です。すいません…ご迷惑を…」
千紗がそう言って謝ろうとするのに、
「千紗は悪くない。悪いのは俺だ。少し考えれば分かる事なのに、一緒に連れて行くべきだった。」
藤堂がそう謝ってくる。
千紗は首を横に振って、そうでは無いと必死でアピールする。

「服、買って来たから、冷えてきたし車で着替えた方がいい。」

千紗の背を押すように誘導されて、明かりの灯された方へと歩く。そこは駐車場だったらしく、藤堂に促され、ショップの袋と共に後部座席に押し込まれる。

何にはサラサラした布地のスカートらしき物が入っていて、色も形も分からないけど何とか手探りで着替えてみる。

「ありがとうございました。サイズぴったりです。おいくらでしたか?」
後部座のドアをガチャっと開けて、申し訳なさそうに千紗は降りて改めてお礼の言葉を口にする。

それを見て、藤堂はおもわず息を呑む。
スカートなんて、生まれてこのかた買った事も無く、サイズも好みも分からなかった。とりあえず手に取ったものを適当に買って来たのだが、真っ赤なハイビスカスの柄のついた巻きスカートが、千紗にとてもよく似合っていて、可愛らしかった。