君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

寄せては返す波打ち際、
大きな流木に腰掛けて、2人しばらく海を眺めていた。

地平線がキラキラと輝き段々と夕暮れの赤焼けになっていく。

「綺麗…。」
千紗が呟く。
きっと、絶対この景色は忘れないだろう。なんだか泣きたくなるような、切ない気持ちで胸が締め付けられる。

「千紗…。今、どこへ行きたい?何を見たい?時間が許す限り俺が連れて行ってやる。…いや、君が見たい景色を一緒に見ておきたい。」

藤堂が静かに話し出す。
突然どうしたんだろうと、千紗は藤堂の横顔に目を向ける。

「藤堂さんは、私なんかに時間を費やさないで下さい。助けて頂いてそれだけでもう十分です。」
千紗からそう言われ、拒まれたような気持ちになって、藤堂は胸がチクンと痛む。

「俺は不必要か…。」
ハァーとため息混じりに息を吐き、立ち上がり波打ち際まで歩き出してしまう。

「そう言う事では…」
千紗は慌てて否定するのに、藤堂の耳には既に届かない。

「藤堂さん…!」
急いで走り寄った千紗は砂に足を取られて躓いてしまう。

「キャッ…!!」
バタンと膝をついたところに、バシャンっと波が来てしまう…

「大丈夫か!?」
気付いた藤堂が慌てて駆け寄る。

めちゃくちゃ恥ずかしい…。
千紗は真っ赤になった顔を両手で隠して、
「だ、大丈夫です。」
と、藤堂に背を向ける。
スカートも手も砂だらけだった。しかも波で濡れているからパンパンと払ってもなかなか落ちない。

「ごめん…俺が離れたから…。」
藤堂は終始申し訳なさそうな顔をして、砂まみれになった千紗の手を払ってくれる。

「鈍臭くてすいません…。」
せっかくの楽しい時間を台無しにしてしまったと、千紗は俯いてしまう。そんな彼女を藤堂はふわりと横抱きに抱き上げて、元いた流木に座らせる。

そして、ジャケットをバサっと脱いで、濡れてしまった千紗の足元にかけてくれる。
「お洋服が濡れちゃう…。」
千紗は申し訳なくて泣きそうになる。

「ちょっと待ってて。変わりを何か買って来る。」
ポンポンと頭を撫ぜて、藤堂は踵を返して走り出す。それがなんだか出会った日の事を思い出し、千紗は思わず苦笑いしてしまった。