君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

「千紗の言葉は特別なんだ。不意にそう言う事言うのやめてくれ。マジでどう反応したらいいか困るから。」
本気で照れてるようで涼の視線が泳ぐ。

千紗はそんな特別感にドキッとしながら、脈を測るために捕らわれていたままだった手をぎゅっと握りしめて、
「涼さんて、照れると可愛いいんですね。」
と追い討ちをかけてみた。

「本当、何…俺をどうしたいの…」
マジでやめてと、涼はしばらく頭を抱えていた。

その後、注文を取りに来たゆかを見るなり正常運転に戻った涼が、淡々と普段のポーカーフェイスで注文している姿を見て、クスクスと千紗は小さく笑ってしまった。

「どうしたの?千紗ちゃん楽しそう。」
ゆかは不思議に思い、急に笑い出した千紗に目を向ける。

「あっ…いえ、なんだか目が見えるって今までの何倍も幸せだなぁって、改めて実感して嬉しくてつい。」
と千紗が答える。

「本当そうよね、見える事が当たり前だと思って生きてきたけど、千紗ちゃんに会って目をもっと大事にしなきゃって思ったわ。」
ゆかも思うところがあるようで千紗の気持ちに共感していた。

「でも、アレよね。主治医が彼氏ってある意味凄いラッキーな事よね。だって、この部屋の照明だって如月先生の指示なのよ。明かりが強すぎると術後の千紗ちゃんにはキツいって教えてくれて調整したのよ。」
片目をつぶってウインクまでしてくるから、千紗はちょっと照れてしまう。

そんな些細な事まで気にしてくれるのは主治医であり、その道の一線で歩み続けている涼だからだろう。

「本当にそうですよね。私は涼さんに出会えた事が1番の幸運だと思います。」

「いや、俺の方こそ9年前、千紗に偶然会えた事。唯一の幸運だと思ってます。」
サラッと言い切ってしまう涼に、ゆかも千紗も一斉に目を向ける。

「私は…涼さんにとって足枷でしかないとずっと思っていました。」
千紗からしたら目が見えない時は、どこに行くのだって彼のサポートが必要だったから、いつも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「もしかして、ずっとそんな風に思ってたのか?俺は千紗に出逢わなければ、きっと眼科医になってなかったし、ここまで医師として精進出来なかったと思う。
千紗の目を治す事が、俺の目標であり夢でもあった。だから、これまでひたすらに走ってこれたんだ。千紗には感謝しかない。」

そう告白めいた言葉を貰い、千紗は心の奥がキュンと締め付けられる感覚を覚える。

「あら、やだ。私お邪魔虫だわ。ではごゆっくりお待ち下さいね。とびきりのオムライス作ってきますから。」
なぜかゆかも顔を赤らめてそそくさと部屋を出て行った。

照度の落ち着いた部屋に2人きり、何を話し出すでもなくしばらく沈黙が漂う。
その沈黙さえも心地良くて、妙にしっくりして穏やかな空気に包まれる。

沈黙を破ったのは他でも無く涼だった。

「千紗はオムライス好きだよな。
9年前も今もオムライスばかり食べてるイメージしか無い。」
涼はくすっと笑いながら、今回もオムライスを選んだ千紗を揶揄う。

「無意識でしたけど、1番好きなので…。」
そんな昔の繊細な事までよく覚えているなぁと感心してしまう。