どっちが先に玄関に辿り着けるだろう?
少しの競争心に煽られて千紗は小走りに廊下を駆ける。
さっきまで家でのんびり鍋でもと思っていた気持ちはどこかに飛んでいってしまっていた。
エレベーターが来るのも待てず、下りのボタンを何回も押してしまう。早る気持がなんなのか自分でもよく分からない。
エレベーターが1階に到着して、扉が開ききらないタイミングでスルッと抜け出て廊下をパタパタと走る。
途中エントランスでコンシェルジュが驚き顔と共にいってらっしゃいませと見送ってくれた。
あと少しのタイミングで玄関の自動ドアがウィーンと開く。
そこには堂々した足取りでこちらに向かって来る見慣れた姿が…
距離にしてあと30メートルくらい。
…残念負けちゃった…勝手に競争していた千紗は少し唇を尖らせながら、玄関で足を止めてこちらを伺っている如月の胸に飛び込む。
「どうした⁉︎そんなに慌てて…家で待っててくれたら良かったのに。」
普段から冷静沈着な如月が千紗を優しく抱き止めながら、驚きを隠せないでいる。
千紗はというと、はぁはぁと息が切れてなかなか話し出せないでいた。
久しぶりに走った。多分、5年ぶりくらい…
「おかえり、なさい…。」
息を切らしながらそれでも笑顔で如月を見上げる。
「ただいま。そんなに走らなくても迎えに行ったのに、まだ休養期間なんだから大人しくしててくれ。」
如月は困ったような顔で、優しく咎めるように千紗の頭をポンポンと撫ぜた。
「ごめんなさい…。久しぶりに、走りました…。目が見えるって、すごく、楽しい…。」
千紗はそれでも、走れた事に嬉しくて満面の笑顔だった。
「息を整えてから出かけよう。」
そんな千紗を見て咎める気には到底なれず、近くにあるソファに座らせ少し休ませる。
「今からどこに食べに行くんですか?
今夜はお鍋にでもしようかなって思ってて買い出しに行こうかと思ってたんです。」
「ごめん。もう少し早く誘えば良かったんだけど、ちょっと急に思い立って行きたくなったんだ。鍋は明日にしよう。帰りに買い物して帰ればいいし。」
如月の中で、もはや明日も千紗が居る事が当たり前のようになっている。既に同棲しているかのような口ぶりだ。
「涼さん…あの、明日は週末なので一度アパートに帰ろうかと…お部屋のお掃除もしたいですし…。」
言いにくそうに千紗が言う。
「…週末なのに帰るのか?」
涼から投げかけられた声はとても寂しそうで、千紗は目を合わせられない。
「ずっと帰ってないので空気の入れ替えもしたいですし…お洋服も、使いたい生活用品もあって…。」
言い訳のように言葉をつなぐ。
「じゃあ俺も一緒に行っていいか?荷物を運ぶなら足が必要だろ?」
是が非でも一緒に着いて行きたいようだ。
「…ありがとうございます。お言葉に甘えてよろしくお願いします。」
今だに彼女と言う立場に慣れない千紗は、どことなく他人行儀で涼としては寂しく感じてしまう。
もっと本音を聞きたいし、誰よりも頼って甘えて欲しいと思うのに…。
「とりあえず、行こうか。」
気を取り直し涼は当たり前のように千紗に手を差し出すから、千紗も素直にその手を取ってソファから立ち上がる。
いつの間にか隣にいるのが当たり前になるように、ちょっとずつ俺に慣れていってくれたらいい。
そう思い涼は千紗の小さな手をぎゅっと握り締めた。
少しの競争心に煽られて千紗は小走りに廊下を駆ける。
さっきまで家でのんびり鍋でもと思っていた気持ちはどこかに飛んでいってしまっていた。
エレベーターが来るのも待てず、下りのボタンを何回も押してしまう。早る気持がなんなのか自分でもよく分からない。
エレベーターが1階に到着して、扉が開ききらないタイミングでスルッと抜け出て廊下をパタパタと走る。
途中エントランスでコンシェルジュが驚き顔と共にいってらっしゃいませと見送ってくれた。
あと少しのタイミングで玄関の自動ドアがウィーンと開く。
そこには堂々した足取りでこちらに向かって来る見慣れた姿が…
距離にしてあと30メートルくらい。
…残念負けちゃった…勝手に競争していた千紗は少し唇を尖らせながら、玄関で足を止めてこちらを伺っている如月の胸に飛び込む。
「どうした⁉︎そんなに慌てて…家で待っててくれたら良かったのに。」
普段から冷静沈着な如月が千紗を優しく抱き止めながら、驚きを隠せないでいる。
千紗はというと、はぁはぁと息が切れてなかなか話し出せないでいた。
久しぶりに走った。多分、5年ぶりくらい…
「おかえり、なさい…。」
息を切らしながらそれでも笑顔で如月を見上げる。
「ただいま。そんなに走らなくても迎えに行ったのに、まだ休養期間なんだから大人しくしててくれ。」
如月は困ったような顔で、優しく咎めるように千紗の頭をポンポンと撫ぜた。
「ごめんなさい…。久しぶりに、走りました…。目が見えるって、すごく、楽しい…。」
千紗はそれでも、走れた事に嬉しくて満面の笑顔だった。
「息を整えてから出かけよう。」
そんな千紗を見て咎める気には到底なれず、近くにあるソファに座らせ少し休ませる。
「今からどこに食べに行くんですか?
今夜はお鍋にでもしようかなって思ってて買い出しに行こうかと思ってたんです。」
「ごめん。もう少し早く誘えば良かったんだけど、ちょっと急に思い立って行きたくなったんだ。鍋は明日にしよう。帰りに買い物して帰ればいいし。」
如月の中で、もはや明日も千紗が居る事が当たり前のようになっている。既に同棲しているかのような口ぶりだ。
「涼さん…あの、明日は週末なので一度アパートに帰ろうかと…お部屋のお掃除もしたいですし…。」
言いにくそうに千紗が言う。
「…週末なのに帰るのか?」
涼から投げかけられた声はとても寂しそうで、千紗は目を合わせられない。
「ずっと帰ってないので空気の入れ替えもしたいですし…お洋服も、使いたい生活用品もあって…。」
言い訳のように言葉をつなぐ。
「じゃあ俺も一緒に行っていいか?荷物を運ぶなら足が必要だろ?」
是が非でも一緒に着いて行きたいようだ。
「…ありがとうございます。お言葉に甘えてよろしくお願いします。」
今だに彼女と言う立場に慣れない千紗は、どことなく他人行儀で涼としては寂しく感じてしまう。
もっと本音を聞きたいし、誰よりも頼って甘えて欲しいと思うのに…。
「とりあえず、行こうか。」
気を取り直し涼は当たり前のように千紗に手を差し出すから、千紗も素直にその手を取ってソファから立ち上がる。
いつの間にか隣にいるのが当たり前になるように、ちょっとずつ俺に慣れていってくれたらいい。
そう思い涼は千紗の小さな手をぎゅっと握り締めた。



