君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

「おー!久しぶりだな。涼君。」
白髪の男性は片手を上げて和かにやって来て、藤堂の肩をバシバシと叩いている。

「ご無沙汰しております。今日はお忙しいところお時間を頂きありがとうございます。」
藤堂は丁寧に頭を下げて白髪の男性と握手を交わした。
 
普段、若干ぶっきらぼうな所がある藤堂だが、こんな風に大人な対応も出来るんだと、内心千紗は驚いていた。

「こちらがお話しをさせて頂いた、松原千紗さんです。」
不意にはサラッと紹介されて、千紗も慌てて頭を下げる。
「初めまして、松原です。よろしくお願いします。」
元々人見知りな千紗にはこれが精一杯だ。

「可愛い子だね。佐久間と言います。よろしく。」
佐久間は千紗にも手を差し伸べてくれる。だけど暗がりの玄関先だから、千紗の目にはよく見えていない。

そんな彼女の右手を取って、藤堂は佐久間の手の位置をさりげなく教える。

「暗いとよく見えないようです。明るい場所なら大丈夫です。」
藤堂が的確に千紗の現状を伝えてくれた。

佐久間はうんうんと頷きながら、千紗の手を取り握手を交わす。

「今日は基本的な検査と、今までのカルテを見させてもらうね。僕は臨床検査医もしているから、最新の薬とかも紹介してあげられる。松原さんは高校生だっけ?」

休日の病院は照明が消され、少し不気味な怖ささえ感じる。そんな薄暗い廊下を3人で歩きながら、佐久間医師は親しげに千紗に話しかけくる。

千紗は藤堂の手に導かれながら、佐久間医師が持つ懐中電灯の灯りを見つめ、足を前に前に進めていた。

「高校1年生です。」

千紗は聞かれた事だけを緊張しながら答える。元々口数が多い方ではないし、人見知りの引っ込み思案だ。その上、男性には免疫が無く、同級生とだって上手に話せないくらいだ…。
さらに病気になり、以前にも増して人見知りは加速していた。

それを思えば、唯一普通に会話出来る異性は、家族以外は藤堂涼ただ1人だけだった。

衝撃的な出会いのせいか、藤堂の壁を作らないおおらな雰囲気や、ズバッとものを言う竹を割ったかのような性格が、千紗にとっては良かったのかもしれない。