君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

昼が少し回った頃、いつものようにりょうさんが白衣を脱いで昼食片手にやってくる。

入院してから毎日、彼とそんなふうにお昼ご飯を楽しんでいた。それはきっと、介助人がいないと食べる時間がかかってしまう私の為に、自ら介助をかって出てくれたのかもと、彼の優しさに甘えていた。

「お疲れ様です。一緒に食べようと思って待ってました。」

「お疲れ様…。」
りょうさんは素っ気なくそう言って、簡易イスを引っ張り出して私のいるベッドの横に座る気配を感じるけれど…いつにも増して口数が少ない。

「あの…お手紙ありがとうございました。初めてこういうの貰ったので凄く嬉しいです。大事にしたいと思います。」
ここは私から話を切り出さなければと意気込み話し出す。

「…読んだら捨てて欲しいって書いた筈だけど…。」
いつもより若干低めでぶっきらぼうな声からどことなく気まずさを感じとる。

りょうさんだったらラブレターなんて平然とやって退けてしまいそうなのに、と少し意外に感じる。

「…こんな小っ恥ずかしくなるとは思わなかった……」
まるで後悔しているかのような感じで呟くから、

「私は本当に嬉しかったんです。1番の宝物になりました。…だからそんな事言わないでください。」

「俺としては直ぐ抹消して欲しい気持ちでいっぱいだ…」
それでも観念したようにフッと笑う。

「貴重な昼時間がなくなる。早く食べよう。とりあえず…その事は一旦忘れてくれ。」
そこからは無理矢理吹っ切ったようで、何事もなかったように、私を介助しながら昼食を食べ始めた。

照れてるのかな?なんだか可愛い…
私は1人ほくそ笑み、こんな彼を知れるのは彼女である特権な気がして嬉しくなった。

「何?…なんか嬉しそうだね。」
私としてはこっそり幸せを噛み締めていたのに、めざとく見つけられて容赦なく聞いてくるから、

「いえ…
明日からはりょうさんの介助が要らなくなると思うと、なんだかソワソワしてしまって。」
悟られないよう咄嗟に違う方向に話を切り替える。

ある意味本当に自立した大人になれる気がして、嬉しさが込み上げていた。

「思えば、手術を決めてからそんなふうに千紗が楽しそうに笑う事なかったな。良かった…。」
彼が心底ホッとしたような感じで言うから、

「楽しみですよ?ずっと…
ただ、もしものことを考えると、あまりはしゃがないようにって、気持ちを抑えてただけです。でも、もういいでしょ?」
フフッと笑うと、不意にチュッと軽くキスをされてびっくりする。

「えっ…ええっ⁉︎」
驚きで小さくパニックになる私を、楽しそうに笑いながら彼が言う。
「つい、可愛くて止められなかった。」

「えっと…でも、ここ病院…。」
慌て過ぎて咄嗟にそう言ってしまう。

「俺の彼女は優等生だな。たまにはいいんだよ羽目外しても、毎日真面目に働いてるんだから。」
開き直ったような晴々した口調でそんな事を言う。

2人だけのプライベート空間は、普段の彼から想像出来ないくらい甘々で、それでいて居心地の良いぬるま湯みたいで、ずっと浸かっていたいと思うほど幸福に満たされていた。

そしてついに夕方になる。