君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

少しだけだと自分を戒めながら、気持ちが溢れて制御出来なくなる。
愛しむようにそっと触れていた唇が、気付けば啄むように何度も角度を変えて攻めたててしまっていた。

不慣れな彼女は息をするのも絶え絶えで、苦しかったのか俺の胸をトントンとノックする。

「ごめん!つい…」
我に帰り慌てて彼女に謝る。

彼女はしばらく息を整えてから、
「大丈夫です…けど、ここ病院…。」
控えめなお咎めを受けて、

「ごめん…手術後にするキスではなかった…反省します。」
ひたすら許しを乞う俺は彼女の頬をそっと撫ぜる。さっきより幾分頬がほんのりとピンクに染まっていた。

医者としてあるまじき行為だ。これ以上2人っきりでいたら俺自身が何をするか分からない。

自分を落ち着かせる為に、立ち上がり簡易イスを片付けて、モニターをチェックする振りをして彼女から距離をとる。

「りょうさん?…もう行っちゃうんですか?」
見えない彼女が明々後日の方向に手を差し出して俺を探すから、慌ててその手を捕まえて甲にキスをする。

ビクッと震えるそれすらも愛しくて、ついフッと笑顔になってしまう。

「…手術後はどうしてもアドレナリンが出て、感情が昂ってしまうから今の俺は危険だ。千紗を傷付けてしまいそうで怖いから…。」
この感情を隠せる訳もなく素直に伝えて手をそっと離す。

「もう少しだけ…」
それでも彼女が寂しそうな声でそう呟くから、俺はなかなか離れる事が出来なくなってしまう。

何を話すでもなくただただ手を握り直して、少しの時間を過ごす。

「…そろそろ行かないと…また明日、顔出すよ。」
後ろ髪引かれる思いで何とか彼女にしばし別れを告げた。