トントンと小さくノックをしても返事がない為、そっとドアを開けて中に足を運ぶ。
そこには既に医療スタッフは居なくて、ベッドの上に彼女がポツンと1人横になっていた。
彼女の母親も声を聞けて安心したのかそこには既に居なかった。
千紗は両親には心配をかけたくないと、連絡先や保証人の欄は佐久間夫人にお願いしていた。
だが俺自身、彼女の身内同様な気持ちで見守っていたから、ご両親だけには秘密裏に連絡をとっておいたのだった。
まさかこんな事になるとは思わなかったが、今となっては駆けつけてくれていて良かったと思う。
特殊な治療や処置の場合は、どうしたって身内の同意書が必要不可欠になるから、今回の場合は迅速に対応出来た事で大事に至らなかったのだ。
もしも、後で彼女に知られ責められたとしても…後悔はしないだろう。
「千紗、お疲れ様、良く頑張ったな…。」
ベッドサイドで顔を覗くとまだ血の気の引いた真っ青な顔色で、どうしたって心配になる。
目には俺が自ら施した包帯が巻かれている。
普段だったら最後の処置は看護師か助手に任せるのだが、俺以外の男に触らせたくない気持ちが強すぎて理性が働かなくなった。
医者として、彼女の男として情けないが…独占欲丸出しだ。
「千紗…気分はどうだ?」
そっと真っ白な頬に触れる。
「…如月、先生…ですか?」
他人行儀な応えが返って来てそれだけで若干凹む。
「スタッフも誰もいないから気にしなくていい。吐き気や耳鳴り、何が少しでも異変があったら直ぐ教えてくれ。」
医者のふりして、実のところただの心配症で小心者の素の俺が顔を出す。
「大丈夫です。
まだ、ちょっとふわふわした感じ…はするけど…お酒飲んだ時みたいな?気分は悪くありません。」
ゆっくりながらもちゃんと受け答えしてくれた。
薄暗い部屋の中、触れた頬の冷たさに人知れず怯えてしまう。
「寒くないか?空調あげようか?」
不安の波が押し寄せて、先程から質問ばかりを繰り返す。
「大丈夫です。それよりもお仕事大丈夫ですか?まだ、定時の時間じゃないですよね?」
彼女は彼女で、俺の事ばかりを気にしてくれる。
「休憩をもらって来ているから大丈夫。職権濫用はしてないよ。」
安心させたくて少しおどけてみせる。
「それなら良かったです。」
フッと彼女の口元が綻ぶ、その頬をしばらく無言で撫で続ける。
「…手術が終わったら何かお話があったんじゃないですか?」
話を切り出して来たのは彼女の方で…俺は少し手が止まり戸惑う。
「この、包帯が取れた時に話してもいいだろうか?」
きっとその時に全てが終わる…
そんな恐怖が湧き上がり、少しでも先延ばししたい卑怯な気持ちが出てしまう。
「分かりました。」
静かにそう言うと、彼女は頬に触れていた俺の手をそっと握る。
「心配させてごめんなさい。りょうさんに手術を施してもらって本当に良かったです。もし視力が回復しなくてもあまり気負わないでくださいね。」
俺の心情を汲み取ってそんな優しい言葉までくれる。
「大丈夫。このためだけを目標に今までやって来たんだ。全て問題無く出来たと自信を持って言えるから。」
手術は上出来だった。自分でも胸を張って言える。だが、実は1番大事なのはその後だ。後遺症や合併症、または稀に拒絶反応が出る事がある。
他人の一部を移植するのだからそれは仕方のない事で、患者さんによっては壊死さえ見られる事があった。
「さすが凄腕医師です。お願いして良かったです。」
彼女の笑顔が垣間見れてそれだけで、全ての努力が報われた気がした。冷たい指先に怯え両手でぎゅっと握り締める。
「こちらこそ、手術を受けてくれてありがとう。」
そっとその唇にキスをした。
そこには既に医療スタッフは居なくて、ベッドの上に彼女がポツンと1人横になっていた。
彼女の母親も声を聞けて安心したのかそこには既に居なかった。
千紗は両親には心配をかけたくないと、連絡先や保証人の欄は佐久間夫人にお願いしていた。
だが俺自身、彼女の身内同様な気持ちで見守っていたから、ご両親だけには秘密裏に連絡をとっておいたのだった。
まさかこんな事になるとは思わなかったが、今となっては駆けつけてくれていて良かったと思う。
特殊な治療や処置の場合は、どうしたって身内の同意書が必要不可欠になるから、今回の場合は迅速に対応出来た事で大事に至らなかったのだ。
もしも、後で彼女に知られ責められたとしても…後悔はしないだろう。
「千紗、お疲れ様、良く頑張ったな…。」
ベッドサイドで顔を覗くとまだ血の気の引いた真っ青な顔色で、どうしたって心配になる。
目には俺が自ら施した包帯が巻かれている。
普段だったら最後の処置は看護師か助手に任せるのだが、俺以外の男に触らせたくない気持ちが強すぎて理性が働かなくなった。
医者として、彼女の男として情けないが…独占欲丸出しだ。
「千紗…気分はどうだ?」
そっと真っ白な頬に触れる。
「…如月、先生…ですか?」
他人行儀な応えが返って来てそれだけで若干凹む。
「スタッフも誰もいないから気にしなくていい。吐き気や耳鳴り、何が少しでも異変があったら直ぐ教えてくれ。」
医者のふりして、実のところただの心配症で小心者の素の俺が顔を出す。
「大丈夫です。
まだ、ちょっとふわふわした感じ…はするけど…お酒飲んだ時みたいな?気分は悪くありません。」
ゆっくりながらもちゃんと受け答えしてくれた。
薄暗い部屋の中、触れた頬の冷たさに人知れず怯えてしまう。
「寒くないか?空調あげようか?」
不安の波が押し寄せて、先程から質問ばかりを繰り返す。
「大丈夫です。それよりもお仕事大丈夫ですか?まだ、定時の時間じゃないですよね?」
彼女は彼女で、俺の事ばかりを気にしてくれる。
「休憩をもらって来ているから大丈夫。職権濫用はしてないよ。」
安心させたくて少しおどけてみせる。
「それなら良かったです。」
フッと彼女の口元が綻ぶ、その頬をしばらく無言で撫で続ける。
「…手術が終わったら何かお話があったんじゃないですか?」
話を切り出して来たのは彼女の方で…俺は少し手が止まり戸惑う。
「この、包帯が取れた時に話してもいいだろうか?」
きっとその時に全てが終わる…
そんな恐怖が湧き上がり、少しでも先延ばししたい卑怯な気持ちが出てしまう。
「分かりました。」
静かにそう言うと、彼女は頬に触れていた俺の手をそっと握る。
「心配させてごめんなさい。りょうさんに手術を施してもらって本当に良かったです。もし視力が回復しなくてもあまり気負わないでくださいね。」
俺の心情を汲み取ってそんな優しい言葉までくれる。
「大丈夫。このためだけを目標に今までやって来たんだ。全て問題無く出来たと自信を持って言えるから。」
手術は上出来だった。自分でも胸を張って言える。だが、実は1番大事なのはその後だ。後遺症や合併症、または稀に拒絶反応が出る事がある。
他人の一部を移植するのだからそれは仕方のない事で、患者さんによっては壊死さえ見られる事があった。
「さすが凄腕医師です。お願いして良かったです。」
彼女の笑顔が垣間見れてそれだけで、全ての努力が報われた気がした。冷たい指先に怯え両手でぎゅっと握り締める。
「こちらこそ、手術を受けてくれてありがとう。」
そっとその唇にキスをした。



