そこからは無になる。
ただ、目の前の事に集中し手順通りに手術を進める。
「お疲れ様でした。今日の先生の集中力、半端なかったです。まるで教本を見ているかのような手捌きお見事でした。」
我に返ったのは助手からの声だった。
「ありがとう、お疲れ様…」
半ば放心状態でそう返事をして、踵を返して手術室を後にする。
手術着を手早く脱ぎ捨て、手を洗い着替えを済ませる。早く彼女の元へ行きたい一心で、普段よりも数倍早く身支度を整え、歩きながら白衣を羽織る。
完璧な手術だった筈だ。
問題なくやり切れた。医者としての自分は納得出来ているのに、ただの男としては不安が尽きない。
速足で廊下を急ぎ、彼女が運ばれた特別室へとひたすら一直線に向かう。
「如月先生、お疲れ様ー。」
通りすがりに佐久間医師とすれ違うが、頷くのみでただ前だけを見て、ひたすら彼女の元へと押し進む。
「失礼します。どうですか?意識は?」
麻酔医がに問いかけながらベッドに近付く。
今は彼女を全身麻酔から覚ます為の処置をしている最中で、若干驚き顔で麻酔医がこちらをチラリと見る。
「お疲れ様です。今日はやたらと早いですね…。」
普段ならゆっくりとシャワーを浴びて気持ちをリセットする俺のルーティーンを心得ている彼が、その速さに驚きを隠せないでいる。
「意識レベルは?」
自分の事はさておいて、気になるのは彼女の事ばかり…
「今、まだ1段階に入ったところです。呼びかけ応答確認します。」
「俺が応答確認します。」
こんな事今まで無かっただろう麻酔医は、またも目を丸くして驚く。
医師からの処置行為だとしても、俺以外の男がベタベタと彼女に触れて欲しくない。独占欲をむき出しにして医者の特権とばかりに、強引に場所に割り込む。
「あ、ありがとうございます…では、お願いします。」
戸惑いながらも場所を譲渡してくれた彼にお礼を言って、彼女の顔を覗く。
いつもより血の気のない白い肌は、青白くさえ見え心配が増す。
「松原さん、目を覚まして下さい。手術は終わりましたよ。」
麻酔医と看護師がいる手間、馴れ馴れしい態度は見せては行けないとギリギリのところで、素の自分を抑える。
一度声をかけたところで応答が無い。
焦りにも似た不安が頭をよぎる。
「松原さん、目を覚まして下さい。」
堪らず彼女のか細い手をぎゅっと握り、少し身体を揺する。
だめだ…反応が無い…
時間が経つにつれ段々と焦りが出てくる。
麻酔医と必死に彼女を起こす努力を重ねる。
目覚めさせるための投薬を点滴に入れ、刺激を与え何度も何度も呼びかける。
稀にある事例だが、術後麻酔が覚めず昏睡状態続く患者がいる事は確かだ。だが俺にとっては初めての事例で、それが何よりも大切な人だなんて…
彼女が目覚めるまで約半日が費やされた。
ただ、目の前の事に集中し手順通りに手術を進める。
「お疲れ様でした。今日の先生の集中力、半端なかったです。まるで教本を見ているかのような手捌きお見事でした。」
我に返ったのは助手からの声だった。
「ありがとう、お疲れ様…」
半ば放心状態でそう返事をして、踵を返して手術室を後にする。
手術着を手早く脱ぎ捨て、手を洗い着替えを済ませる。早く彼女の元へ行きたい一心で、普段よりも数倍早く身支度を整え、歩きながら白衣を羽織る。
完璧な手術だった筈だ。
問題なくやり切れた。医者としての自分は納得出来ているのに、ただの男としては不安が尽きない。
速足で廊下を急ぎ、彼女が運ばれた特別室へとひたすら一直線に向かう。
「如月先生、お疲れ様ー。」
通りすがりに佐久間医師とすれ違うが、頷くのみでただ前だけを見て、ひたすら彼女の元へと押し進む。
「失礼します。どうですか?意識は?」
麻酔医がに問いかけながらベッドに近付く。
今は彼女を全身麻酔から覚ます為の処置をしている最中で、若干驚き顔で麻酔医がこちらをチラリと見る。
「お疲れ様です。今日はやたらと早いですね…。」
普段ならゆっくりとシャワーを浴びて気持ちをリセットする俺のルーティーンを心得ている彼が、その速さに驚きを隠せないでいる。
「意識レベルは?」
自分の事はさておいて、気になるのは彼女の事ばかり…
「今、まだ1段階に入ったところです。呼びかけ応答確認します。」
「俺が応答確認します。」
こんな事今まで無かっただろう麻酔医は、またも目を丸くして驚く。
医師からの処置行為だとしても、俺以外の男がベタベタと彼女に触れて欲しくない。独占欲をむき出しにして医者の特権とばかりに、強引に場所に割り込む。
「あ、ありがとうございます…では、お願いします。」
戸惑いながらも場所を譲渡してくれた彼にお礼を言って、彼女の顔を覗く。
いつもより血の気のない白い肌は、青白くさえ見え心配が増す。
「松原さん、目を覚まして下さい。手術は終わりましたよ。」
麻酔医と看護師がいる手間、馴れ馴れしい態度は見せては行けないとギリギリのところで、素の自分を抑える。
一度声をかけたところで応答が無い。
焦りにも似た不安が頭をよぎる。
「松原さん、目を覚まして下さい。」
堪らず彼女のか細い手をぎゅっと握り、少し身体を揺する。
だめだ…反応が無い…
時間が経つにつれ段々と焦りが出てくる。
麻酔医と必死に彼女を起こす努力を重ねる。
目覚めさせるための投薬を点滴に入れ、刺激を与え何度も何度も呼びかける。
稀にある事例だが、術後麻酔が覚めず昏睡状態続く患者がいる事は確かだ。だが俺にとっては初めての事例で、それが何よりも大切な人だなんて…
彼女が目覚めるまで約半日が費やされた。



