君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

「りょうさんの分もあるみたいですよ。」
そう伝えると、
「マジで?かなり腹減ってたんだ。」
と、りょうさんも素に戻り子供のような嬉しそうな声を上げる。

「まだ温かいと思うので一緒に食べましょ。」
と、誘う。
「…佐久間医師に借りが出来たな。」
と、罰が悪そうにりょうさんが笑う。
理事長さんや佐久間先生やお陰で、2人の間に出来てしまった医者と患者という壁を、サラッと取り払ってくれた。

しばらく2人、たわいもない話しをしながら食事を楽しみ、ここが病院の一室だという事を忘れる程楽しいひととき過ごす事が出来た。

デザートのショートケーキを食べ終えて、幸せの余韻に浸っていると、りょうさんが突然私の手を取り握り締める。

えっ⁉︎と驚きドキンとして様子を探る。
「ど、どうしたんですか?」
目が見えない分察する事が難しい私は、彼が何を考えているのか分からず、咄嗟に判断が出しにくい。

「千紗に…今まで言えなくて…謝りたい事があるんだ。手術が無事に終わったら話しを聞いて貰えるだろうか?」
まるで懺悔するようにそう言ってくるから一気に緊張する。

どんな時だって動じない強い人なのに、今日は何かに怯えているようで心配になる。

「はい…そんなに改まって言われると気になってしまうんですけど…。」
どんな話しなのかと私だって不安になってしまう。

「手術前に負担になりたく無いから、頭の片隅に入れておいてくれたらいいよ。なんて、無理かもしれないな。俺の事で頭の中いっぱいにしてくれたら嬉しい。」
畏まってしまった私の心をほぐすように、優しく笑いながらそう言うから、

「全て、如月先生にお任せします。よろしくお願いします。」
と素直な気持ちで頭を下げる事が出来た。

明日いよいよ手術に挑む。
たとえ視力を取り戻す事が出来なくても、手術自体に予期せぬ事が起きたとしても、りょうさんを責めるつもりはない。
それが与えられた運命だと全て受け入れる覚悟は出来た。

慣れない病院のベッドの上でなかなか寝付けず1人思う。
彼のいない人生なんて考えられない。この先も願わくば一緒に居たいと切に思う。

フッと思い立ち小さなベッドサイドのランプを付けて、りょうさん宛に手紙を書く。

これまでの事、これからの事、今まで言葉では伝えられなかったいろいろを文字にしたためる。

目が見えなくなってから、点字以外の文字を書いていなかった事もあって苦戦する。

明日、手術が終わったら彼に渡そう。そう決めるとどこか気持ちが安堵して、スッと気持ちが落ち着いて、いつの間にか眠りにつく。