君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

帰り道、
お腹もいっぱいで少し微睡みながら、りょうさんの運転する助手席に座りたわいもない話しを交わしていると、BGMから懐かしい高校時代よく聴いていた曲が流れてくる。

「懐かしい…。」
ついそう呟く。
「本当、良く聴いてたよな…。」
運転席からりょうさんも呟く。
りょうさんも良く聴いていたんだ…。このアーティスト好きなのかな?私は嬉しくなって聴いてみる。

「りょうさんもこのアーティストが好きなんですか?」

「…あの頃流行ってたから…。」
何かを取り繕うようにそういうりょうさんの声で、何故か藤堂涼を思い出す。

あの頃の思い出は彼が全てだったから…懐かしさと切なさと…いろいろな感情が湧き上がり、鼻の奥がツンとして涙が溢れてきそうになる。

唇を噛み締めてそんなノスタルジックな感情をどうにか押し殺す。

「眠かったら寝ててくれて構わない。連れ回してしまって悪かった…疲れただろ?」
急に喋らなくなった私を心配したのかりょうさんが、赤信号で停車したタイミングで膝がけを後部座席から取り寄せ、私の膝にかけてらくれた。

その優しさにまた胸が痛くなる。
もう、藤堂涼の事は忘れて…前を向かなくちゃ…

「ありがとうございます…」
それだけ言うのがいっぱいいっぱいで、後は目を伏せその場をやり過ごした。