君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

「来年は2人で浴衣を着て、ここでまた花火を一緒に観よう。その時には千紗も視力を取り戻している筈だ。」
確信にも似た力強い言葉が私の心に響く。

「そうなれると、どんなに嬉しいか…。」

私には未来の事はよく分からない。だけど医者である彼の言葉は、気休めや嘘ではないと信じられる。

「大丈夫。俺はこの為に日々努力を積み重ねて来たんだ。」
胸に込み上げてくる感情に目頭が熱くなるのを感じる。

「りょうさんの事は信頼してます。全てお任せします。」
まだ、正式に彼の診察を受けた訳じゃないけれど、いよいよ手術が現実味を帯びてきた気がする。

花火を満喫した後は出店をぶらぶらと見て歩く。
「焼きそばの匂い…ですか?」
美味しそうな匂いに空腹を感じていると、

「焼きそばに、広島焼き、フライドポテトにじゃがバター…」
りょうさんが目に映る全ての出店を教えてくれる。
一通り見て回った後に、じゃがバターと広島焼きフランクフルトと、たこ焼きと持ちきれないほど買い込んで、それだけで子供の頃の小さな夢叶えられた気がして胸がいっぱいになる。

「こんなにたくさん食べられるでしょうか。」
子供頃は出来なかった贅沢な買い方に、気分が高揚しどうしても笑顔が溢れてしまう。

「そんなにも腹が減っていたのか?」
りょうさんがサラッと頬に触れてくれから、そんなにも顔に現れてたのだろうかとちょっと恥ずかしくなる。

「子供の頃、出店で買う物はどれか一つって制限されていたので、いろいろ食べれるのが嬉しくて…。」
頬が熱を持つ。きっと真っ赤になってるだろうけど、暗くて多分顔色までは分からない筈…

「夢が叶えられて良かったな。寒くなかったらそこで食べるか?」
確かに夜風は冷えてきたけれど、さほど寒さは感じないから一つ返事でこくんと頷く。

境内の薄明かりのベンチの下で、出店で買った食べ物を分け合いながら2人で食べる。それは高級レストランのフルコースよりも、ある意味贅沢で幸せな時間だった。

「こんな食事で喜ぶなんて、千紗は安上がりだな。もっと贅沢するべきだ。」
笑いながらりょうさんが言う。

「私にとっては、今がとても贅沢な時間です。」

「じゃあ来年はもっと贅沢に出店の食べ物を全て買って食べ尽くそう。」
そうりょうさんが提案してくる。当たり前のように来年を思い描く彼とは、きっとこの先も変わらず一緒にいられるだろうなと不安はない。
私も微笑みながら手探りでじゃがバターを口いっぱいに頬張った。