君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

佐久間先生の家に到着すると、待ち構えていた奥様に手を引かれて、私だけ長い縁側の奥にある和室に連れて行かれる。

佐久間先生の邸宅は純日本家屋で、昔ながらの縁側に和室が数部屋続き、その縁側からは池のある庭園が見えるらしい。

これは先生というより奥様の意向で、普段から和服を着こなし、古き良き日本を愛する淑女の鏡のような人なのだ。

「どうかされたんですか⁉︎」
りょうさんと引き離され少し不安な気持ちになる。

「ごめんなさいね、急に呼び出して。
浴衣をね、貴女にと縫ってたんだけどやっと完成して、どうしても着てる姿を見たかったのよ。」

「浴衣…⁉︎ですか?」
夏も終わりもうすぐ10月に入るけど、まさか私の為に浴衣を縫っていてくれたなんて…
一言も聞いていなかったから、驚きの声しか出ない。

「間に合う自信がなかったから、内緒にしてたんだけど来年の花火大会には着れるわ。」
そう言って笑う佐久間先生の奥様は、いつも歳を感じさせない可愛らしさだ。こんな風に歳をとっていけたらいいなと、憧れさえも感じている。

「わざわざ私の為にありがとうございます。細かい作業で大変だったんじゃないですか?」
ただの他人である筈の私なんかにと感動すら覚える。

「私に娘がいたらやってあげたかった事なのよ。」

せっかくだからと浴衣を着る事になり、奥様に着付けされながら、話しはどんどん盛り上がっていく。

「りょう先生の分も縫ってみようかしら。来年は2人で浴衣デートも素敵よね。」
奥様が嬉しそうにそう言い始めるから、私は驚きながらも、似合いそうだなとつい想像してしまう。

「あの子は背が高いから採寸しなくちゃね。何色が合うと思う?」

「この浴衣は何色ですか?」

「藍色にピンクの牡丹が映えるのよ。上から下にかけてグラデーションがまた素敵なのよ。この生地に一目惚れして、自分で作ってみたいと思い立ったのよ。」

「凄いですね。きっと綺麗なんでしょうね…。りょうさんにも藍色、合いそうですね。」

「そうね、お揃いの色も可愛いかも。」
女子同士わいわいと話が進んで、束の間の楽しい時間を過ごす。

「よし、着付け完成よ。早く、男どもに見せに行きましょう。」
奥様は、器用に髪までアップに整えてくれた。