「もしかして…前島さんですか?」
千紗がそう尋ねると、
「そうだよ。最近いつも帰りが早いから全然話し出来なかったけど…いつもこんなとこに居たんだ。それで…なんで泣いてるの?
もしかして…嫌な事言われた?誰かにいじめられた?」
盛大に勘違いした前島が憶測を大きくそらしながら、千紗の涙の原因を探る。
「あ…いえ…この本、凄く切なくて、ちょっと感情移入してしまっただけで…大丈夫ですよ。」
そう言って千紗が柔らかく笑う。
うわぁ、マジで可愛い。
前島はその笑顔に釘付けになる。ずっと千紗に恋心を抱いていた。見た目もだが、その心が澄み渡った空のようだとも思っていた。
仕事帰りどこかで2人になれたら、この気持ちを告白したいとタイミングを狙っていたのだ。
なのに…いつもことごとく後輩の麻里奈に邪魔されて、2人きりになれずにいた。
今日、この図書室で千紗を見つけたのはほんの偶然だった。図書室前に設置されている自動販売機だけに期間限定のジュースがあり、それを帰り際飲んで帰ろうかとふと思いたった。
暗い廊下を歩いて来てみれば、なぜか誰もいないはずの図書室の電気が点いていた。不思議に思って扉のガラス窓から覗いてみれば思い人である千紗がいたのだ。
これは運命なのかもと、知らずと胸が高鳴った。少しその綺麗な顔を堪能しようとこっそり覗いていたら、突然ポロポロと涙を流し始めるから、気が動転して走り寄ったのだ。
近付けば涙で真っ赤になった瞳はキラキラと潤み、ドキンと胸が高鳴るほど魅力的で心を引き寄せられた。
やっぱり好きだ。と再確認した前島はこのチャンスをものにしなければと思う。
「松原さん、雨も酷くなって来たし駅まで歩くのは大変だから車で家まで送るよ。」
松島は、期待を込めて千紗を誘う。
「あっ…いえ、大丈夫です。この後予定があるので…。」
千紗は、如月と待ち合わせをしているとは言い出せず話を濁してみるのだが、
「じゃあ、そこまで送らせて。」
どうしてもこのチャンスを逃したくない前島は、粘り強く食い下がる。
いつだってここぞと思い誘っても、程良く断られるのが常だから、1回2回断られたくらいじゃそう容易に諦められない。前島だった。
どう断れば納得してくれるだろうか…。
彼の粘り強さは良く知っているから、もう正直に如月の事を話した方がいいのかも、と千紗は思う。
千紗は本を両手で抱きしめ、もう読書に戻るのは難しいなと、若干残念に思いながら本を棚に返そうと立ち上がる。
すると急に立ち上がったからかフワッと身体から血の気が引く感じがして、目の前がスーと真っ白になる。
「ま、松原さん⁉︎」
驚いたのは前島で、倒れそうになる千紗を咄嗟に両手で支えると同時に、千紗が持っていた本がゴンと床に落ちる音が図書室に響き渡る。
「だ、大丈夫⁉︎」
前島が驚き慌てふためいていると、誰かの影がサッと近付き前島の腕から千紗を奪い去る。
「えっ…?」
咄嗟の事で前島は何が起こったのか瞬時には理解できなかった。
蒼白な顔の千紗を片膝をついて抱き抱える男…
はっ⁉︎
なぜ?この人がこんな所に!?
「千紗、大丈夫か!?」
その声は紛れもなく如月だった。普段の冷静さを少し欠いて彼女を呼ぶ。
「あっ…ごめんなさい…急に…立ちくらみが…」
如月の逞しい腕に抱きしめられ安堵しながらも、起き上がらなくちゃと千紗は焦る。
「えっ…と、如月先生ですよね?なぜあなたがここに…?」
前島は目の前の現状を把握出来なくて頭が混乱していた。
「そう言うあなたこそ誰ですか?」
チラリと前島に鋭い眼光を飛ばす如月から、殺気にも似た怖さを感じブルッと前島は身震いした。
だがその一方で如月は医者らしく、千紗の手当てを素早く始めている。首の動脈に手を当て脈を測り的確に対処している。
「貧血だろうから、しばらくじっとしてた方がいい。」
なんとか立ちあがろうとする千紗を如月が優しく悟す。
「あの…同僚の前島と申します。
…図書室に明かりがついていたので気になって来てみたら松原さんが居たので…。」
前島も何か分からない緊張感の中で、それでも引いてはいけないと勇気を振り絞って名乗り出る。
「そうですか、ありがとうございました。後は自分が対処しますので大丈夫です。お帰り下さい。」
如月はそんな前島を察する事なく淡々とそう告げて、直ぐに目線を千紗に落とす。
「えっと…あの…お2人は、どのようなご関係で……。」
聞かずにはいられないこの状況で、変な汗までかき始める。
「彼女は俺の大切な人です。」
低くよく通る声で如月が静かにそう告げた。
前島は、ガーンとハンマーに打たれたぐらいの衝撃を受け跪きそうになる。
「あっ…そうなんですね。
じ、じゃあ、心配ないですね。お先に、失礼します…。」
ここにはこれ以上いられないと、逃げるようにその場を後にした。
千紗がそう尋ねると、
「そうだよ。最近いつも帰りが早いから全然話し出来なかったけど…いつもこんなとこに居たんだ。それで…なんで泣いてるの?
もしかして…嫌な事言われた?誰かにいじめられた?」
盛大に勘違いした前島が憶測を大きくそらしながら、千紗の涙の原因を探る。
「あ…いえ…この本、凄く切なくて、ちょっと感情移入してしまっただけで…大丈夫ですよ。」
そう言って千紗が柔らかく笑う。
うわぁ、マジで可愛い。
前島はその笑顔に釘付けになる。ずっと千紗に恋心を抱いていた。見た目もだが、その心が澄み渡った空のようだとも思っていた。
仕事帰りどこかで2人になれたら、この気持ちを告白したいとタイミングを狙っていたのだ。
なのに…いつもことごとく後輩の麻里奈に邪魔されて、2人きりになれずにいた。
今日、この図書室で千紗を見つけたのはほんの偶然だった。図書室前に設置されている自動販売機だけに期間限定のジュースがあり、それを帰り際飲んで帰ろうかとふと思いたった。
暗い廊下を歩いて来てみれば、なぜか誰もいないはずの図書室の電気が点いていた。不思議に思って扉のガラス窓から覗いてみれば思い人である千紗がいたのだ。
これは運命なのかもと、知らずと胸が高鳴った。少しその綺麗な顔を堪能しようとこっそり覗いていたら、突然ポロポロと涙を流し始めるから、気が動転して走り寄ったのだ。
近付けば涙で真っ赤になった瞳はキラキラと潤み、ドキンと胸が高鳴るほど魅力的で心を引き寄せられた。
やっぱり好きだ。と再確認した前島はこのチャンスをものにしなければと思う。
「松原さん、雨も酷くなって来たし駅まで歩くのは大変だから車で家まで送るよ。」
松島は、期待を込めて千紗を誘う。
「あっ…いえ、大丈夫です。この後予定があるので…。」
千紗は、如月と待ち合わせをしているとは言い出せず話を濁してみるのだが、
「じゃあ、そこまで送らせて。」
どうしてもこのチャンスを逃したくない前島は、粘り強く食い下がる。
いつだってここぞと思い誘っても、程良く断られるのが常だから、1回2回断られたくらいじゃそう容易に諦められない。前島だった。
どう断れば納得してくれるだろうか…。
彼の粘り強さは良く知っているから、もう正直に如月の事を話した方がいいのかも、と千紗は思う。
千紗は本を両手で抱きしめ、もう読書に戻るのは難しいなと、若干残念に思いながら本を棚に返そうと立ち上がる。
すると急に立ち上がったからかフワッと身体から血の気が引く感じがして、目の前がスーと真っ白になる。
「ま、松原さん⁉︎」
驚いたのは前島で、倒れそうになる千紗を咄嗟に両手で支えると同時に、千紗が持っていた本がゴンと床に落ちる音が図書室に響き渡る。
「だ、大丈夫⁉︎」
前島が驚き慌てふためいていると、誰かの影がサッと近付き前島の腕から千紗を奪い去る。
「えっ…?」
咄嗟の事で前島は何が起こったのか瞬時には理解できなかった。
蒼白な顔の千紗を片膝をついて抱き抱える男…
はっ⁉︎
なぜ?この人がこんな所に!?
「千紗、大丈夫か!?」
その声は紛れもなく如月だった。普段の冷静さを少し欠いて彼女を呼ぶ。
「あっ…ごめんなさい…急に…立ちくらみが…」
如月の逞しい腕に抱きしめられ安堵しながらも、起き上がらなくちゃと千紗は焦る。
「えっ…と、如月先生ですよね?なぜあなたがここに…?」
前島は目の前の現状を把握出来なくて頭が混乱していた。
「そう言うあなたこそ誰ですか?」
チラリと前島に鋭い眼光を飛ばす如月から、殺気にも似た怖さを感じブルッと前島は身震いした。
だがその一方で如月は医者らしく、千紗の手当てを素早く始めている。首の動脈に手を当て脈を測り的確に対処している。
「貧血だろうから、しばらくじっとしてた方がいい。」
なんとか立ちあがろうとする千紗を如月が優しく悟す。
「あの…同僚の前島と申します。
…図書室に明かりがついていたので気になって来てみたら松原さんが居たので…。」
前島も何か分からない緊張感の中で、それでも引いてはいけないと勇気を振り絞って名乗り出る。
「そうですか、ありがとうございました。後は自分が対処しますので大丈夫です。お帰り下さい。」
如月はそんな前島を察する事なく淡々とそう告げて、直ぐに目線を千紗に落とす。
「えっと…あの…お2人は、どのようなご関係で……。」
聞かずにはいられないこの状況で、変な汗までかき始める。
「彼女は俺の大切な人です。」
低くよく通る声で如月が静かにそう告げた。
前島は、ガーンとハンマーに打たれたぐらいの衝撃を受け跪きそうになる。
「あっ…そうなんですね。
じ、じゃあ、心配ないですね。お先に、失礼します…。」
ここにはこれ以上いられないと、逃げるようにその場を後にした。



