君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

「まぁ、いいよ。俺は千紗は今のままで全然いいと思うけど、千紗自身が満足出来るまでいつまででも待つよ。」
コクンと可愛いく頷く千紗の頭を撫ぜて、如月はあんまり遠くに行かないでくれと願った。

2人で取る昼休みはあまりにも早く時間が過ぎて、話したい事の半分も話せないまま終わってしまった。

夕方近く、予報通りにシトシトと雨が降り始め、千紗の気持ちを憂鬱にさせた。

定時で仕事が終わりを告げて、いつものように如月の終わりを待つ為、病院内の図書室に行く。夕方となれば入院患者の夕食時で、図書室はいつも以上にガランと静まり返っていた。

点字の書物の並ぶ棚のすぐ横に1人がけのソファがあり、そこに腰を下ろして本を読みながら如月の仕事が終わるのを待つのが、この1週間の習慣になっていた。

昨日から読み始めた点字の恋愛小説は、盲目の少女と船乗りの淡い恋の物語で、ここから佳境に入る気になるところで、昨日は迎えが来てしまったから早く読み進めたくてソワソワしていた。

少女は船乗りのためこの恋を諦めようと、諦めなければいけないと葛藤している箇所から読み始める。

千紗はまるで自分と如月のようだと少し投影してしまう。
どんどん読み進めて行くうちに気持ちがどんどん入り込んでしまい、少女の切ない思いが千紗の心にズキズキと刺さる。

気付けば涙がポロポロと流れ始めていた。
ハンカチをポケットから取り出して、どうにか涙を堰き止める。

「松原さん⁉︎どうしたの⁉︎」
バタバタと足音と共に声がして、千紗はフッと現実に戻る。

えっと…今の声は誰だろう?
本に没頭してたから少しぼんやりしてしまう。

「大丈夫?何かあった?」
矢継ぎ早に声をかけられ呆気に取られながら、声の主が誰か探る。