君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

「角膜移植についての詳しい話は、アイツに聞いた方が早い。残念ながら僕は年間数例しかやった事がないし、彼以上に経験を積んだ医師はここには居ないからね。」

「そうなんですね。まだ、若いのに凄いです。」
佐久間医師の話では、アメリカと日本では角膜移植の手術の実施数がかなり異なり、日本全体では年間二千件程に対し、アメリカは四〜五万件あるという。

その中でも如月がいたカルフォルニア病院は1日にニ、三件を越すほど角膜移植が頻繁に行われていたらしい。
あの若さでそんな経験を積んだ医師は、日本では彼くらいしかいないだろうと、佐久間医師が太鼓判を押す。

シンポジウムでの姿はその片鱗に過ぎない事を千紗は知る。だから、この病院は彼を手放したくないし、他の病院でも是非にというオファーが多いのだという。

「ここの理事長はたとえ娘を除外してでも、アイツを手放したくないのさ。」

えっ⁉︎っと千紗は驚く。
佐久間医師は如月と理事長の娘、椎名香とのいざこざをも知っていた口振りだ。

「そして、アイツの唯一の執着は君だから、君には長くここで働いて欲しいと理事長は思っている筈だよ。」
佐久間医師からそう聞いて、千紗は隠さなければと思っていた如月との関係すらも周知されていた事に驚く。

「私、何も知らなくて…。」
如月からは大丈夫だという言葉しかもらっていない。何がどうなったのか、既に決着が着いていた事さえ知らなかった。

「まったく仕事じゃ完璧なのに、プライベートはポンコツだなあ。」
ワハハッと佐久間医師が楽しげに笑う。

「私もあえて聞かない方がいいと思っていたので…。」
恋愛初心者の千紗にとって、彼女という距離感がまだよく分からず、どこまでプライベートに踏み込んでいいのか迷っていた。

「まぁ、自分自身についての事はあんまり話したがらないかもしれないが、きっと君が聞けば話し出すはずだから。」
佐久間医師からそうアドバイスをもらい、これからは遠慮しないで何でも聞いてみようと千紗は思った。