「私始めてです…誰かを家に上げたのは…。」
玄関のドアを開けながら千紗にそう言われると、嬉しそうに如月は、
「それは光栄だな。」
と笑う。
「狭いですけど、どうぞ。」
千紗の部屋は築20年を過ぎた1DKだけど、リフォームされたフローリングに、カウンターキッチンが付いたしっかりしたものだった。
「キッチン広いね。ああ、床がびしょ濡れだから入らない方がいい。」
足を一歩踏み入れようとした千紗を、後ろから抱きしめるように止める。
「あ…ありがとう、ございます。」
それだけでドキンと心拍が上がり、千紗は緊張してしまう。
「雑巾か…バスタオルの方が良さそうだな。千紗は滑るといけないからそこで待ってて。」
そう言われては何も出来ない。
バスタオルを如月に渡して、カウンターに置いてあるスツール椅子に座り千紗は大人しく待つしかなかった。
如月は靴下を脱ぎズボンをたくし上げて床を拭く。
こんなに吹きこぼれて、あれだけの火傷で済んで本当に良かったと思う。吹きこぼれを感知する便利グッズが無いか後で調べなくてはと心に決める。
キッチンのコンロ周りを丁寧に拭いていると、ハンバーグや鶏肉の真空パックが目に入ってくる。
電気調理器からは何やら良い匂いが漂ってくるし、よく見るとカウンターの上には、惣菜がタッパに入れられ所狭しと並んでいた。
「これ、全部千紗が作ったのか⁉︎」
驚きで拭く手が止まる。
「はい…。いつも1週間分作り置きするので、ハンバーグとかは冷凍して2、3週間は保ちますし、ビーフシチューもいっぱい作って小分けにして冷凍します。」
いつもの事だから千紗にとっては造作もないのだけど、
「こんなにいろんな種類を1人で作れるなんて凄いな。」
普段料理を全くしない如月にとっては驚きでしかなかった。
「もし良かったら、持って帰られますか?」
千紗が遠慮気味に聞く。
「えっ!いいのか?」
明らかにテンションを上げた声で如月が返事をするから、
「お口に合うかわかりませんが、良かったら…。」
と、千紗は微笑む。
「ありがとう。でも俺、鍋もフライパンすら持ってないんだ。あるのはレンジかトースターくらいで…。」
千紗の手作り料理は是非食べてみたいが、ハンバーグやチキンソテーは焼く前のようだし、自分には無理そうだと肩を落とす。
明らかに落ち込んだ如月の声を聞き、クスクスと千紗は笑いながら、
「お惣菜だったら温めて食べれますよ。
もしかして、炊飯器とかも無いんですか?」
「家で食べる事がまず無いから。レンジで温めるタイプの米ならある筈だが…。」
「今まで何を食べて?」
と、つい聞いてしまうほど食生活が心配になる。
「ほぼ外食だから。それか日本じゃコンビニ弁当が便利だよな。」
「りょうさんの食生活が心配です。」
「そうか?プロテインとサプリメントは欠かさず飲んでるけど。」
医者の不養生とは言うけれど…ホントにそれだな。と千紗は思った。
「好き嫌いはありますか?」
千紗は立ち上がり、食器棚から小分け用のタッパを取り出しカウンターに並べ、スツール椅子に座りながら惣菜を分け始める。
「千紗が作ったものなら何でも食べるよ。」
そんな甘いセリフを平気に言ってくる如月は、やっぱりモテる人生を今まで歩んで来たに違いないと実感する。
「歴代の彼女さんには負けると思いますが、食べやすいように小分けのタッパに入れておきますね。」
千紗がなにげなくそう言うと、
「聞き捨てならないな、今の言葉。
残念ながら医者になってから恋人らしき人がいた事は無いし、誰よりも孤独な日々を送ってると自分でも思っているんだが。」
いつの間にかすぐ隣に来ていた如月が、そう言って千紗を驚かす。
ワッと驚きスツール椅子から落ちそうになる。それを如月がすかさず抱き止めて、ぎゅっと抱きしめられる。
玄関のドアを開けながら千紗にそう言われると、嬉しそうに如月は、
「それは光栄だな。」
と笑う。
「狭いですけど、どうぞ。」
千紗の部屋は築20年を過ぎた1DKだけど、リフォームされたフローリングに、カウンターキッチンが付いたしっかりしたものだった。
「キッチン広いね。ああ、床がびしょ濡れだから入らない方がいい。」
足を一歩踏み入れようとした千紗を、後ろから抱きしめるように止める。
「あ…ありがとう、ございます。」
それだけでドキンと心拍が上がり、千紗は緊張してしまう。
「雑巾か…バスタオルの方が良さそうだな。千紗は滑るといけないからそこで待ってて。」
そう言われては何も出来ない。
バスタオルを如月に渡して、カウンターに置いてあるスツール椅子に座り千紗は大人しく待つしかなかった。
如月は靴下を脱ぎズボンをたくし上げて床を拭く。
こんなに吹きこぼれて、あれだけの火傷で済んで本当に良かったと思う。吹きこぼれを感知する便利グッズが無いか後で調べなくてはと心に決める。
キッチンのコンロ周りを丁寧に拭いていると、ハンバーグや鶏肉の真空パックが目に入ってくる。
電気調理器からは何やら良い匂いが漂ってくるし、よく見るとカウンターの上には、惣菜がタッパに入れられ所狭しと並んでいた。
「これ、全部千紗が作ったのか⁉︎」
驚きで拭く手が止まる。
「はい…。いつも1週間分作り置きするので、ハンバーグとかは冷凍して2、3週間は保ちますし、ビーフシチューもいっぱい作って小分けにして冷凍します。」
いつもの事だから千紗にとっては造作もないのだけど、
「こんなにいろんな種類を1人で作れるなんて凄いな。」
普段料理を全くしない如月にとっては驚きでしかなかった。
「もし良かったら、持って帰られますか?」
千紗が遠慮気味に聞く。
「えっ!いいのか?」
明らかにテンションを上げた声で如月が返事をするから、
「お口に合うかわかりませんが、良かったら…。」
と、千紗は微笑む。
「ありがとう。でも俺、鍋もフライパンすら持ってないんだ。あるのはレンジかトースターくらいで…。」
千紗の手作り料理は是非食べてみたいが、ハンバーグやチキンソテーは焼く前のようだし、自分には無理そうだと肩を落とす。
明らかに落ち込んだ如月の声を聞き、クスクスと千紗は笑いながら、
「お惣菜だったら温めて食べれますよ。
もしかして、炊飯器とかも無いんですか?」
「家で食べる事がまず無いから。レンジで温めるタイプの米ならある筈だが…。」
「今まで何を食べて?」
と、つい聞いてしまうほど食生活が心配になる。
「ほぼ外食だから。それか日本じゃコンビニ弁当が便利だよな。」
「りょうさんの食生活が心配です。」
「そうか?プロテインとサプリメントは欠かさず飲んでるけど。」
医者の不養生とは言うけれど…ホントにそれだな。と千紗は思った。
「好き嫌いはありますか?」
千紗は立ち上がり、食器棚から小分け用のタッパを取り出しカウンターに並べ、スツール椅子に座りながら惣菜を分け始める。
「千紗が作ったものなら何でも食べるよ。」
そんな甘いセリフを平気に言ってくる如月は、やっぱりモテる人生を今まで歩んで来たに違いないと実感する。
「歴代の彼女さんには負けると思いますが、食べやすいように小分けのタッパに入れておきますね。」
千紗がなにげなくそう言うと、
「聞き捨てならないな、今の言葉。
残念ながら医者になってから恋人らしき人がいた事は無いし、誰よりも孤独な日々を送ってると自分でも思っているんだが。」
いつの間にかすぐ隣に来ていた如月が、そう言って千紗を驚かす。
ワッと驚きスツール椅子から落ちそうになる。それを如月がすかさず抱き止めて、ぎゅっと抱きしめられる。



