君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

「カルボナーラでよかった?デザートとかはどうする?」
ゆかさんが注文をとりながらそう聞いてくるから、

「カルボナーラでお願いします。
デザートは…この前食べたモンブランはありますか?」 
佐久間先生と如月先生の夕飯にお呼ばれされた日に、食べたモンブランがとても気に入っていたから聞いてみる。

「まだ2、3個残ってたはず。
モンブラン好評みたいでいつも1番に売れちゃうのよね。ちょっと見てくるね。」
ゆかさんはおしぼりとお冷を机に置き、どこにあるか私に伝えた後、足早に戻って行った。

さすがに15分歩いて来たから喉が渇いていた。冷たいおしぼりで手を拭いて、汗をかいて濡れたグラスを溢さないように持ち上げて、そっと口をつける。

「美味しい…。」
つい、そう呟いてしまうくらい、渇いた身体に染み込んで、ごくごく半分くらいまで一気に飲んでしまう。

ジンジンと痛む火傷した指先を、冷えたグラスで冷やすと少し痛みが和らいだ気がして、
しばらくグラスを握っていると、

カツカツカツ…
と近付いてくる足音を聞いて、ゆかさんだろうと音の方へ目を向ける。

「こんばんは。あなた…松原千紗さんよね?どうしてあなたがここに居るの?」
苛立ちでトゲがあるようなツンケンした声で誰かが話しかけてきた。

「えっと…どちら様でしょうか?」
怯えながらそっと声の主に聞いてみる。

「私、椎名香と申します。渚病院の秘書をしてますの。あなたオペレーターの松原さんよね?なぜこんな場所にいるの?」
人を見下すような話し方に、少しビクビクしてしまう。

「あ…お世話になっております。
このお店は、自宅から近いので…歩いて来れるので常連でして…。」

「丁度良いわ。ちょっとお話しいいかしら。」
椎名香はそう言って私の席に向かい合うカタチで座ってきた。

「単刀直入に聞きますけど、あなたと如月先生とのご関係は?」
鋭いキレのある物言いは、まるでナイフのように突き刺さる。

「如月先生、ですか?
私の主治医である佐久間先生を通して、少し知り合いました。
如月先生はただ…目が見えない私を気にかけてくださっているだけです。」

如月先生と婚約したと噂で聞いた事がある。
彼からはそんな話しはまったく聞かないけど、あまり下手な事は言わない方が良いだろと警戒して、当たり障りないよう慎重に話した。

「そう…何度か病院で一緒にいるところを見かけたものですから。少し気になってたんです。彼、優しいからきっとあなたが可哀想でいろいろ気にかけてしまうのね。
でもね、お忙しい方だから彼の手を煩わせないでくださらない?」
そう言う椎名香は、あたかも如月先生は私のものよと牽制するように言ってくる。

「如月先生とは、それほどでは…。」
この人を敵に回してはいけないと、本能的に察知する。

「私と如月先生はもうすぐ婚約する予定なんです。良からぬ噂が流れるといけないので、彼に近付かないで頂きたいの。あなたも出来るだけ長く今の病院で働きたいでしょ?」

脅し…?のような言い方をされて、私の足元がぐらつく感覚を覚える。

しっかりしなくては…。
私の受け答え一つで働き場所を無くすかもしれない…そんな怖さを感じて、手に汗を握る。