君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

(千紗side)

夕暮れ時、日が短くなったのか思っていたよりも辺りが暗く、風も少し涼しさを増していた。

白杖片手に近くのコンビニへと足を進める。

家から5分近くの場所にあるコンビニまで来た時、ふと、佐久間先生とよく外食していた洋食店が頭に浮かぶ。

最近、お互い忙しくて会う機会が減っていた。あそこのパスタ食べたいな…。
ここまで来たら後10分ほどで洋食屋さんに辿り着く。

そう思うとすでにパスタの口になっていて、迷いもそこそこに身体が勝手に歩き出す。

広い海岸沿いの道に出て、横断歩道を渡るとその道沿いにお目当ての洋食屋さんはある。

波の音と潮の香りが少しだけ気分を上げてくれた。

チリンチリン
店の玄関ドアを押し開ければ、いつもの呼び鈴の音を聞く。

「いらっしゃいませ。あら、千紗ちゃん久しぶり。」
出て来たのはこの店のオーナーの奥さんのゆかさん。
引越して来たばかりの頃、あまり料理が出来なくて、仕事帰りによく夕飯を食べに寄っていた。

「こんばんは。久しぶりにここのカルボナーラが食べたくなったので来ました。」
私は無理やりテンションを上げて笑顔を作る。

「まぁ、嬉しい。佐久間先生も最近いらっしゃらないし寂しかったのよ。病院は忙しいの?」
ゆかさんが私を席に案内しながら気さくに話しかけてくれる。

「佐久間先生は特に忙しそうです。海外出張も多くて私もなかなか会えないんです。」

「そうなのね、寂しいわ…。その代わり、如月先生はちょくちょく来てくださるんだけど。」
ゆかさんの楽しいお喋りを聞きながらいつもの指定席、この店の奥の左角に向かう。

そこからの窓の眺めが絶景なのだと、佐久間先生が言っていた。

少し照度を落とした落ち着いた感じの店内は、ゆったりとしたピアノ曲が流れ、雰囲気もあって恋人達のメッカにもなっているそうだ。

「今夜も予約が何件か入ってるのよ。ごめんなさいね、騒がしくて。」
耳が敏感な私に考慮してそう言ってくれる。

「いえいえ大丈夫です。全然気になりませんから。」
こんな混み合う時間帯に、私1人でこの店の1番良い席に座るのは気が引けるけど、人目につかないこの席を私の為に開けてくれる。

「本当は予約席だったけど、それは後ろの席に変えとくわ。気にしないでのんびりしていってね。」
ゆかさんから小さく耳打ちされて私は無言でコクン頷く。
他の席でも構わないと言いたいところだけれど…人の目が気になって言葉を躊躇した。

すでに白杖片手に歩く私はきっとお店でも浮いた存在だから、隠れるように4人用のテーブル席に座る。