君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

次の日は日曜で、別段何も変わる事なくひとりの時間を有意義に過ごす。

洗濯に掃除、買い出しに来週分の作り置き。黙々と家事をこなす。
一日中忙しなく動いていれば、昨日のりょうさんの言葉を思い出さなくて済むから。
そう思っていたのに…

家事の合間のふとした瞬間に思い出し、赤面して座り込む。朝からこの行為をすでに3回は繰り返した。

ともしたら、昨日の事は夢だったのかな…?と思うほど変わらない休日だった。

夕方、夕飯を作るついでに作り置き料理を何品か作る。料理は毎週末の日課であり、近頃唯一の趣味とでも言える。

きんぴらごぼうに、じゃがいもの甘辛煮、さつまいものレモン煮。
あとは、ハンバーグに鶏肉のソテーに…週替わりに3日分くらいの準備をした。
その下ごしらいをしながら、夕飯のパスタを茹でるため、大きな鍋を引っ張り出してコンロに火をかける。

その間にハンバーグは後は焼くだけの整形段階で真空パックにして、鶏肉のソテーは味付けし漬け込んだまま、これも真空パックにする。

こうして冷凍しておけば1週間は持つし、仕事で疲れて帰って来た夜はとても助かる。

ハンバーグを一つずつ真空パックに詰める段階で、しょうさんはいつも夕飯どうしているのだろうと、ふと思い手が止まる。

シンポジウムで一緒に見た料理器具や家電製品に、やたらと感心していたから、きっと普段あまり料理はしないような気がする。

栄養偏ってないかな?
ちゃんと食べてるのかな…?
そんな事を母親のように心配になってくる。

いやいやいや…
私は彼女でも無ければ、家族でも無いんだから、彼の食生活を気にする必要はない。

そんなお節介をされてもきっと迷惑なだけだよ…。自分に言い聞かせ、無理やり思考を頭から追い出した。

告白はされたけど…彼は彼、私は私、干渉も依存もするべきでは無い。ましてやまだ付き合ってもないのだから…。

否定と肯定を繰り返し、自分がどこに向かっているのか分からなくなってくる。

今、彼は何をしてるんだろう…?
サーフィンが唯一の趣味だって言ってたから、今日も海にいたのかな…?
会いたいな…

そんな事を考えながらボーっとしていたら、ブクブクとお鍋のお湯が沸騰してジュワーと吹き出す音がする。

大変っ…忘れてた!!
慌てて火を止めて鍋蓋を取ろうとして、慌て過ぎて鍋ごとひっくり返してしまった。

ガランガランガランガラン……

指先に痛みが走って慌てて水道水に手を晒す。

触れたところそれほど痛みは無いし、水膨れにはなってなさそうだから良かった…と胸を撫で下ろした。

これだけの事で気分が一気に落ち込む。

目が見えなくなってすぐは、今まで簡単に出来ていた事が簡単では無くなって、1人では何も出来ない役立たずのガラクタになってしまった気がした。

それでも3年の月日が経てば、諦めと妥協を覚えなんとか上手くこなすようにはなれたはずだった。

だけど、こんな初歩的ミスで…

どこにお湯が溢れているか分からないから、もう少しお湯が冷めるまでキッチンには近付かない方がいいと思い、中途半端な状態でキッチンから離れる。

夕飯どうしようかな…気分転換で今夜は外で食べよう。