君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

辺りがうす暗くなって、潮風が吹くと寒さを感じるくらいになる。

「…ずっとこうしていたいけど、傷にさわるといけない。そろそろ帰ろう。」
そう言って、抱きしめていた腕を解いたりょうさんは、私の手を握り車へと導いてくれる。

その優しさに心が痛い。
今すぐ好きだと答えたいのに、怖気付いて足踏みしてしまう私がいる。

そんな私の気持ちなど気付く事も無く、りょうさんは助手席に座らせて、温かいミルクティーまで持たせてくれた。

「…ありがとう、ございます…」
泣き疲れた私の声はカサカサで…温かいミルクティーが身体中に染み渡る。

「一緒に夕飯でもって誘いたいけど…千紗も疲れただろ?目も真っ赤だし足の怪我も心配だから何か買って帰ろう。」
帰り道に牛丼屋に寄って、ドライブスルーで夕飯を買ってくれた。

ずっと奢らせてしまっている事に罪悪感が芽生えてくる。
「これだけでも出させて下さい。」 
と、私は強引に2人分のお金を彼に押し付ける。何度かそのやりとりを繰り返して、

「君は変なところで頑固だよな…
気にしなくていいのに、きっとずっと引きずってしまうんだろうから今回は折れておくよ。」
と、半ば呆れたように押し負けてくれてお金を受け取ってくれた。

「俺も借りは嫌だからまた奢らせてもらう。そうしたらこの連鎖は永遠に続くからね。」
楽しそうにそう付け足して言ってくるから、一枚もニ枚も上手なのだと…負けたのは私の方だった事に気付いた。

「送って頂きありがとうございました。」
アパートに到着して、さよならの時間になる。お別れの時はどうしたって寂しくて、離れ難い気持ちになる。

「荷物だけでも部屋まで運ばせてくれないか。」
彼はこれは譲れないとばかりに私の荷物を持って、私の腰に手を回し支えてくれた。急接近に慣れない私はワタワタとして、

「えっ?えっ…?」
と戸惑うばかりで…
そのまま腰を支えられて2階角の私の部屋まで運ばれる。

「あ、ありがとうございました。
あの…もしよかったら少し寄って行かれますか?お腹も空いたでしょうし、お夕飯一緒に食べませんか?」
離れ難くてそう口走ってしまう。

「…凄く魅力的なお誘いだけど… 今日は帰るよ。このままだと自制出来ずに送り狼になりそうだから。」
彼は葛藤するようにそう言って、私の頭をポンポンと触れて去って行った。

寂しい…
離れた側からまた会いたくなる…
…心がぎゅっと苦しくなった。