君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

その後、千紗のアパートに到着したが、本人はまったく起きる気配がなく、起こすのも可哀想に思った如月は、海辺近くに借りてあるセカンドハウスに千紗を連れて帰る事にした。

抱き上げて車から降ろす時も身じろぎ一つする事なく、これは…確かに簡単にお持ち帰りされてしまうな…と、外では飲むなという父親の言葉に同感した。

このセカンドハウスを選んだのは、千紗との思い出の海というだけでなく、渡米した際に気分転換で始めたサーフィンをする為だったが、この1か月は忙し過ぎてサーフィンはおろか、セカンドハウスに帰る事さえ出来てはいなかった。

如月はダブルベッドにそっと千紗を降ろし、しばらくその寝顔を見つめる。

初めて彼女に出会った日の事が走馬灯のように蘇る。あの頃より彼女は大人びて綺麗になった。俺なんかが触れる事さえ烏滸がましいと思うほど、神聖な気持ちになるくらいだ。

あの頃、好きだと伝えていれば、今と何かが変わっただろうか…。

いや、今更過去を引きずったところで何も変わりはしない。それよりもこれから先どう関わり、築いて行くかの方が大切だ。

そう思い直し、如月は千紗の頬にそっと触れる。マシュマロみたいに白くてふわふわした感触はいつまでも触れていたいくらいだ。

小さな唇に引き寄せられ触れたい、キスをしたい衝動に駆られるが、寸でのところで思い止まる。

だめ、だ…。
俺なんかが強引に触れてはいけない領域だ。彼女を困らせ悩ませる存在だけにはなりたく無い。邪な気持ちを振り切りその場を離れる。

明日彼女が目覚めたら、この状況にきっと驚くだろうな…知らない場所で見えない恐怖に襲われるかもしれない。出来る限り彼女より早く起きて安心させなければいけない。

そんな事を考えていたら、如月自身も睡魔に襲われる。

軽くシャワーを浴びてリビングのソファで眠りについた。