君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

可愛いく酔ってしまった千紗を連れ店を出たのが10時過ぎ、電車で帰ると駄々をこねる彼女をなんとか助手席に乗せ、海岸沿いの道を走る。

「…眠いなら寝ていいよ。君の家は知ってるから。」
先程からかくんかくんと船を漕ぎ、必死で眠気と戦っている千紗に言う。

「…先生はずるいです…。私ばっかり振り回して…。」
眠気と闘いながら、可愛くそう如月に訴えて来る。

「振り回されてるのはこっちだ。
仮にも恋人役を志願した男なんだから、プライベートは名前で呼んで欲しい。」
酔っ払い相手だから、普段言えない事も気楽に言えてしまう、この状況を如月も楽しんでいた。

「りょうさん…って漢字でどう書くんでか?」
千紗が眠いせいか、いつもよりゆっくりな喋り方で、また聞いてくる。

「なぜ、それを気にする?どんな字だって変わらないだろ?」
如月も何故そこにこだわるのか、理由を知りたくて少し突っ込んで聞いてみる。

「昔…好きだった人が…同じ、名前だったので…。」
消え入りそうな小さな声でそれでも如月にははっきりと聞こえた。

好きだった…人!?
過去形ではあるがあの頃、もしかしてお互いが思い合っていたのかとショックにも似た虚しさが如月の頭を占める。

「…今は?
今でもそいつの事が好きなのか?」
ドキドキ勝手に高鳴る心音を制しながら、恐る恐る…聞いてみる。

が…なかなか返事が無いからチラリと見やると、可愛くスースーと寝息を立てていた…。

はぁーー本当に俺の方が振り回されてばかりだ…
と、如月は大きなため息を吐いた。